──はじめに
民法の大改正ほどではないが、建築基準法にも法改正があった。細かい法改正まで含めればキリがないが、宅建試験には重要だと思われる法改正を3つほど取り上げてみた。
言うまでもなく、宅建試験では法改正部分が狙われやすい。毎年、建築基準法は2題の出題があるが、そのうち1題(少なくとも1肢)は法改正問題ではないかと私は思っている。
統計問題と同様に、きちんと対策を立てて臨んだ人とそうでない人との差は歴然であろう。あとで後悔しないためにも、しっかり抑えてもらいたい。
また各小見出しの最後に、確認のための一問一答を付しておいたので実力試しにどうぞ。
──特殊建築物の建築確認の緩和
【法改正前】
一定の用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が100㎡を超えるものの新築等については、建築確認が必要となる。
【法改正後】
一定の用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が200㎡を超えるものの新築等については、建築確認が必要となる。
100㎡超の床面積が200㎡超に緩和された。建築確認での緩和は珍しい。なお、特殊建築物および新築等とは、次に掲げたもののことをいう。
〈特殊建築物〉
劇場、映画館、学校、病院、診療所、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、百貨店、マーケット、コンビニ、展示場、自動車車庫、倉庫など
〈新築等〉
新築、増築、改築、移転、大規模修繕、大規模模様替え、特殊建築物への用途変更(ホテル→旅館など類似した用途間での用途変更は含まない)
→これらのいずれかを行おうとする場合で、床面積の合計が200㎡を超えるときは、全国どの区域であっても「建築確認」が必要となる。
【一問一答でチェック】
❶事務所の用途に供する建築物をホテル(その用途に供する部分の床面積の合計が500㎡)に用途変更する場合、建築確認は不要である。◯か✕か?
❷建築主は、共同住宅の用途に供する建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が180㎡であるものの大規模の修繕をしようとする場合、当該工事に着手する前に、当該計画について建築主事の確認を受けなければならない。◯か✕か?
──建蔽率の制限の緩和
【法改正前】
建蔽率の限度が10分の8とされている地域外で、かつ、防火地域内にある耐火建築物の場合、建蔽率の限度に、10分の1が可算(緩和)される。
【法改正後】
⑴建築率の限度が10分の8とされている地域外で、かつ、防火地域内にある耐火建築物等の場合、建蔽率の限度に、10分の1が可算(緩和)される。
⑵建築率の限度が10分の8とされている地域外で、かつ、準防火地域内にある耐火建築物等または準耐火建築物等の場合、建蔽率の限度に、10分の1が可算(緩和)される。
⑶商業地域など、建蔽率の限度が10分の8とされている地域内で、かつ、防火地域内にある耐火建築物等では10分の2が可算されて10分の10となり、建蔽率の制限そのものがなくなった。
語尾に「等」が付くことにより、建蔽率の制限も改正前よりは緩和されることになった。地域外と地域内もしっかり区別できるようにすること。80%地域+防火地域内+耐火建築物等=100%も重要。
【一問一答でチェック】
❸都市計画において定められた建蔽率の限度が10分の8とされている地域外で、かつ、防火地域内にある耐火建築物の建蔽率については、都市計画において定められた建蔽率の数値に10分の1を加えた数値が限度となる。◯か✕か?
❹建蔽率の限度が10分の8とされている地域内で、かつ、防火地域内にある耐火建築物については建蔽率の限度が10分の9に緩和される。◯か✕か?
──防火壁等に関するもの
【法改正前】
耐火・準耐火建築物を除き、延べ面積が1,000㎡を超える建築物は、原則として、防火上有効な構造の防火壁によって有効に区画し、かつ、各区画の床面積の合計をそれぞれ1,000㎡以内としなければならない。
【法改正後】
耐火・準耐火建築物を除き、延べ面積が1,000㎡を超える建築物は、原則として、防火上有効な構造の防火壁又は防火床によって有効に区画し、かつ、各区画の床面積の合計をそれぞれ1,000㎡以内としなければならない。
防火壁だけではなく防火床も有効となった。
【一問一答でチェック】
❺準防火地域内において、地階を除く階数が3(高さ12m)、延べ面積1,200㎡で事務所の用途に供する建築物を建築しようとする場合、この建築物が耐火建築物である場合は、防火上有効な構造の防火壁又は防火床によって有効に区画しなければならない。◯か✕か?
【答】❶ ✕ ❷ ✕ ❸ ◯ ❹ ✕(10分の10になるから制限なし) ❺ ✕(耐火・準耐火建築物は除く)