──はじめに
分野別過去問の最高峰、LECの『ウォーク問』の構成と使い方について少し述べてみたいと思う。
年度別に代表される過去10~12年間の過去問集であれば、直近の10~12年ということだから、最近の出題傾向にあった問題群といえる。
しかしながら過去問には、悪問、奇問の類いもあるのだから、過去◯◯年にこだわれば、自ずとそういう問題も掲載されることになる。
その点『ウォーク問』は、1990年(平成2年)以降の過去問の中から、悪問、奇問の類いを除いた選りすぐりの良問がセレクトしてあるのだ。
とはいえ、平成前半の問題より、後半の問題の方が多めにセレクトしてあるので、全体としては近年の出題傾向を反映していると言えなくもない。
むしろ平成初期から中期にかけて、頻出論点として繰り返し問われてきた定番ともいえる良問が、時代の流れに埋もれてしまうことなく取り上げられているのは特筆すべきことだと思う。
また『ウォーク問』は、各問題の重要度に応じて、特A、A、B、Cの表記がされている。特AとAだけでも全体の73%を占めるので、当面の目標として、これらの完全マスターを心掛けてほしい。
なお、最新の令和元年の本試験問題は、免除科目の統計を含めすべてが収められている。
──❶権利関係
特A┄┄21題
A┄┄68題
B┄┄64題
C┄┄16題〔計169題〕
権利関係では、特Aが21題と少なく、AとBが60台で拮抗している。出題率の低いCも16題ある。
当面、特AとAのマスターを心掛け、それらが仕上がったらBを手掛ける、というやり方で進めていってほしい。
Cに関しては、余裕があればやれば良いし、余裕がなければスルーしても構わない。
特A~Bまでが終わったら、Cをやるよりも、「改正民法の条文穴埋め&一問一答」シリーズの赤文字のタイトルを手掛けてもらいたい。
▶権利で10点を獲りにいく
https://www.paparing-takkenshi.com/entry/2020/05/21/194145
改正民法での出題となる今年は、過去問だけではどうしても抜けが出てしまう。その抜けを補充するためにも、法改正対策が必要となるのだ。
LECの『ウォーク問❶』に加え、これら法改正にまで手が回れば、権利関係で10点の大台に乗せることも不可能ではないと私は思っている。
──❷宅建業法
特A┄119題
A┄┄52題
B┄┄┄9題
C┄┄┄0題〔計180題〕
一見して分かるように、宅建業法にC問題は一つもない。圧倒的に特Aが多く、次いでAと続く。この2つで実に95%を占める。Bは僅かに9題だ。
宅建業法は、本試験の問題数が20題もあり、難易度も高くないため得点源にしなければならない。B問題を含めて完全マスターを心掛けてほしい。
私は以前に、何度も「過去問は95%以上の正解率を目指してほしい」と述べた。しかし宅建業法に限っていえば、95%ではなく100%である。
近年、宅建業法に個数問題が増えてきていることもあって、生半可な知識では通用しなくなってきている。ここで受験生に求められているのは、肢レベルでの完璧な知識、パーフェクトな知識なのだ。
他の分野と違って、業法は過去問の焼き直し率が高い。9割を超えている。よって『ウォーク問❷』さえ完璧ならば、18点以上は普通に得点できる。
権利や法令の正解率が9割止まりだったとしても、こと業法に関しては10割、つまり100%にしなければならないのである。
──❸法令上の制限・税・その他
特A┄┄41題
A┄101題
B┄┄52題
C┄┄┄7題〔計201題〕
法令上の制限はやや変則で、A問題が全体の5割を超える。次いでB→特Aときて、Cは7題のみだ。
ここも権利と同じく、特AとAをまず先にマスターする。この2つで全体の7割を占める。次にB問題を手掛け、Cはやってもやらなくても良い。
問題は税と価格の評定である。価格の評定とは、地価公示法と不動産鑑定評価基準のこと。毎年、どちらかが出題される。不動産鑑定評価基準がやや難しいが、どちらも過去問マスターで対応できる。
税に関しては、得意な人は全部マスターした方がいいが、そうでなければ、とりあえず不動産取得税と固定資産税をマスターする。これも毎年、どちらかが出題される。
所得税(譲渡所得)は難しいので、苦手な人や時間のない人はスルーしても構わない。
他に印紙税に登録免許税、贈与税などもあるが、時間がなければこれもスルー。強いていえば、印紙税だけはやっておいた方がいいかも知れない。
その他の免除科目(5問免除)については、統計を除き、過去問のマスターのみで3~4点狙える。統計もきちんと対策を立てれば、更に1点が上乗せになるから、ここは普通に4点以上を得点できる。
この『ウォーク問❸』については、C問題と税の一部を省いても構わないが、それ以外は、業法と同様に完全マスターを心掛けてほしい。
──肢レベルで究めること
言うまでもなく、『ウォーク問』を消去法で解いて終わりにしてはいけない。たとえ消去法で正解を導き出したとしても、正解肢ではない残りの肢もしっかり分析する。
肢レベルで究める、とはそういうことだ。全体の正解率が95%を超えていたとしても、単に正解肢の番号を覚えていただけかも知れない。肢レベルで理解していれば、そういった心配もなくなる。
私はこれまで、「過去問の正解率95%以上」を事あるごとに唱えてきたが、もう少し突き詰めていうのなら、「肢レベルの理解」もこれに加えたい。
正解率95%以上+肢レベルの理解
LECの『ウォーク問❶~❸』を回して、これら2つが真に身に付いていれば、それだけで合格基準点は余裕で超える。40点だって夢ではない。
私が宅建合格を目指していた頃、ネットでLECの講師の方(名前は失念)が、
「ウォーク問は20回転させてください」
と語っていたのを覚えている。
その言葉は、当時の私には衝撃だった。今でも私の脳裏に焼き付いていて離れない。
実際に20回転させるかどうかは別にして、それくらいの意気込みで『ウォーク問』に取り組んでほしいということだろう。
仮に5回転しかできなかったとしても、その内容が20回転に匹敵するほど充実しているのなら問題ない。私はそう捉えて取り組んだ。
だから私は、『ウォーク問』は最終的に7回転しかしていない。しかし20回転したのと同じくらい内容的には充実したものがあった。実際、これで合格できたのだから間違いではなかったと思う。
皆さんもぜひ、20回転はムリでも、それに匹敵するくらいの内容で『ウォーク問』に取り組んでいただきたい。肢レベルでの理解を心掛けて。