──はじめに
意思表示による契約は、申込みと承諾によって成立する。ここでは意思表示に欠陥のあるものを5つ取り上げ、順に解説していく。
宅建試験での意思表示の出題率は概ね5割程度だが、権利関係の中では、比較的高い出題率といえる。
5つの意思表示のうち、心裡留保と錯誤、詐欺の3つで法改正があった。
特に錯誤は、条文の言いまわしがガラリと変わったので注意が必要だ。
無効と取消し、善意の第三者と善意無過失の第三者の違いもしっかり区別しなければならない。
売主と買主、貸主と借主は当事者の関係だが、これら以外の関係者が第三者である。また意思表示をした者を表意者と呼ぶこともある。
──心裡留保〔93条〕
Aが、売る気もないのに、Bに対して「マイホームを100万円で売る」という意思表示をした。
冗談だとしても、Bが真に受けて100万円を調達したのだとしたら、AはBにマイホームを100万円で売らなければならない。
これが「心裡留保」である。
心裡留保による意思表示は、原則として有効となる。
ただし、相手方Bが、表意者Aの意思表示が真意でないことを知り(悪意)、又は知ることができた(善意有過失)ときは、その意思表示は無効となる。
心裡留保の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
──虚偽表示〔94条〕
Aには多額の借金があり、債権者から土地を差し押さえられそうだ。
それを回避するために、Bと示し合わせて、Aの土地をBに仮装譲渡することにした。ほとぼりが冷めたら返してもらうつもりで、、
これが「虚偽表示」である。
相手方と通じてした虚偽表示(通謀虚偽表示)は無効である。
そして虚偽表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。登記の有無も関係ない。
その後、善意の第三者から悪意の転得者に土地が譲渡された場合も、この転得者は保護の対象すなわち善意の第三者と同じ扱いとなる。
悪意の第三者から善意の転得者に土地が譲渡された場合も、この転得者は保護の対象となるので注意。
──錯誤〔95条〕
Aは、豊島区に所有する甲土地を売りたかったのに、勘違いから文京区に所有する乙土地をBに売ってしまった。
これが「錯誤」である。
錯誤による意思表示は、それが法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
例えば次のような場合。
❶意思表示に対応する意思を欠く錯誤
→甲土地と乙土地を間違えたetc.
❷表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤(動機の錯誤)
→近くに新駅ができると思ったetc.
動機の錯誤の場合、それが表示されていれば取り消すことができる。
ただし、表意者に重大な過失があれば、次の2つの例外を除いて取り消すことはできない。
❶相手方が表意者に錯誤があることを知り(悪意)、又は重大な過失(重過失)によって知らなかったとき。
❷相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
錯誤による取消しは、善意・無過失の第三者に対抗することができない。善意の第三者ではなく、善意・無過失の第三者であることに注意。
──詐欺又は強迫〔96条〕
まず「詐欺」とは、人をだまして錯誤に陥らせ、それによって意思表示をさせること。
対して「強迫」とは、相手方を脅すなどして怖がらせ、強引に意思表示をさせることである。
詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
相手方に対する意思表示について、当事者以外の第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り(悪意)、又は知ることができたとき(善意有過失)に限り、その意思表示を取り消すことができる。
詐欺による意思表示の取消しは、善意・無過失の第三者に対抗することができない。
強迫による意思表示の取消しは、善意・無過失の第三者にも対抗することができる。
──意思表示のまとめ
【心裡留保】
原則有効。相手方が悪意又は善意有過失の場合は無効。善意の第三者には対抗できない。
【虚偽表示】
原則無効。善意の第三者には対抗できない。第三者からの転得者がいる場合、第三者と転得者のどちらかが善意ならば転得者は保護される。
【錯誤】
取り消すことができる。表意者に重大な過失があれば原則として取り消すことはできない。善意・無過失の第三者には対抗できない。
【詐欺】
取り消すことができる。善意・無過失の第三者には対抗できない。
【強迫】
取り消すことができる。善意・無過失の第三者にも対抗できる。
▶不動産キャンプ
https://ioecu5ft.autosns.app/a/cmZLjPNo7h/tVtz
5つの意思表示【権利】|パパリン宅建士
#note 「穴埋め問題」あります↓
https://note.com/paparingtakken/n/nf9a5a2c156cf