──完璧主義者のデメリット
職人と呼ばれるような成功者は別にして、自称「完璧主義者」はプライドが高く歩みも遅い。
例えばテキストでも、最初からすべて覚えようと躍起になってしまう。
通常の宅建テキストは、500〜700ページほどある。常識的に考えて、それだけの分量を一周目から全部覚えられるわけがない。
そして大抵は、途中で諦めて投げ出すのが落ちだ。そこが完璧主義者の最大のデメリットかも知れない。
今では少なくなってきたが、昔はアルファベット順に並べられた市販の英単語帳が何点かあった。
英単語が得意な人は、アルファベットのどこから始まる単語を問われても、それなりに答えられたものだ。
だが完璧主義者は、aやbで始まる英単語にはやたら詳しいが、sで始まるものはからっきしダメだった。
そういうタイプの人は、宅建の権利関係でも、制限行為能力者にはめっぽう強いが、契約不適合責任や賃貸借あたりは苦手のままである。
また完璧主義者の問題点は、一度覚えたところを忘れていないかが気になり、先に進むことよりも前に戻って確かめることを優先する。
そんな三歩進んで三歩下がるような勉強の仕方では、一向に最後のページにたどり着くことができない。
──たがを外して前進する
私は以前に、「じっくり派とスピーディー派」というタイトルのブログ記事を書いたことがある。
▶じっくり派とスピーディー派®
https://paparing-takkenshi.com/entry/2020/02/20/215413
この記事に当てはめれば、完璧主義者はじっくり派に多く、スピーディー派にはほとんどいない印象だ。
私はじっくり派ではあったが、幸い完璧主義者ではなかった。
完璧主義者が一冊のテキストや過去問を終わらせるには、まず完璧主義というたがを外さなければならない。
そして後ろを振り返らずに、前だけを見て歩んでいくことだ。
この2点は特に意識してほしい。
一周目の理解が5割でも、次は7割、その次は8割というふうに少しずつ積み上げていくようにする。
つまり足し算。過去問の正解率は割り算だが、それは中盤以降の目標であって、最初のうちは積み上げ(回転数)を優先すべきである。
──武器を手に入れる
テキストを読んでいても、本文より脚注が気になる。これも完璧主義者にはありがちなことだ。
もちろん最終的には脚注も読んだ方が良いのだが、本文がきちんと押さえられていないのに脚注だけ覚えていても仕方がない。
まずは本文の内容をしっかり理解すること。それが先決である。
過去問でいえば、A〜Cランクの問題のうち、最初はAを、次いでBの問題を押さえるようにする。
A,Bランクが曖昧なうちは、Cランクの問題に手を出すべきではない。
つまり細かな枝や葉より、木の幹を重視するということ。
それが核となり武器になるからだ。
立派な建物を完成させても、基礎工事がいい加減だとやがて崩れ落ちる。
その基礎となる部分が、テキストでいえば本文、過去問でいえばA,Bランクの問題となるわけである。
──俯瞰の大切さ
たとえ浅くても、テキスト等を一通り終わらせることが重要である。
完璧主義者がテキストを3分の1で挫折した場合と、とりあえず一周して3分の1しか理解できなかった場合とでは、後者の方がずっとマシだ。
後者はさらに繰り返すことで理解度が増すが、前者はそこから先に進むことすら困難だからである。
そして何より、最後のページまで到達することで全体像が見えてくる。つまり俯瞰できるということだ。
これが大きい。全体を見渡せたことが自信へとつながり、その後の勉強にも拍車がかかる。
モチベーションだって高まる。
途中で投げ出していたら、この自信は絶対に生まれないし、モチベーションなんて論外である。
また全体像が見えたことで、今後の課題も自然と浮かび上がってくる。この先、自分が何をやらなければならないのかが見えてくるのだ。
これこそが全体を俯瞰することの効果だし、メリットである。
そのためには、なるべく早い時期に、テキストなり過去問(一問一答)を一周させてほしい。
それができたら、あとは何度か回転させることで精度も高まり、過去問の正解率が95%以上になれば合格も視野に入ってくるようになる。
──合格への第一歩
そもそも不合格になる人は、その俯瞰ができていない。出口の見えない森の中を彷徨っている状態だ。
テキストや過去問を一周もできていない人が不合格者には多い。
だからどんな教材であれ、一冊仕上げることを強く意識してほしい。
合格者の多くはこれができている。
つまり、完璧に仕上げた教材が必ずといっていいほどあるのだ。
そのためには、まずは一冊の教材を最後のページまで終わらせること。浅くても良いので終わらせる。
そこがスタートラインとなり、合格への第一歩になるのだから。