──年度別か分野別か?
過去10~12年の「年度別過去問集」をメインに使っている人(使う予定の人)は、一体どれくらいいるだろうか?
私は以前から、過去問はLECの『ウォーク問』に代表される「分野別過去問集」をやるように訴えてきた。
この考えは今でも変わっていないし、今後も変わるとは思えない。
2019年3月にTwitterに参入した私は、同年、半年以上にわたって宅建の受験生らと関わってきた。
そして過去問をやるにも、年度別派と分野別派がいることを知った。
割合はほぼ五分五分だった。
しかし夏以降の模試で、40点以上の高得点を叩き出していたのは、主に分野別過去問集を使っていた人だ。
それはもう、圧倒的と言ってもいいほどの開きだった(8対2くらい)。
──メリットとデメリット
では、どうしてそんな偏りができてしまったのか?
例えば宅建業法。『ウォーク問』のような「分野別過去問集」を使っている人は、業法ならば業法ばかりを集めた過去問を、小項目ごとに集中的に解くことになる。
営業保証金の問題は9つ連続、媒介・代理契約と重要事項の説明は、それぞれ11連続で問題が並んでいる(『ウォーク問❷宅建業法』より)。
このように、同じ項目の問題を連続して解けば、その項目の論点が嫌でも頭に入ってくる。これが分野別過去問集の最大の強みだ。
もちろん「年度別過去問集」にもメリットはある。
12年分の過去問集ならば、1日に1年分ずつ、12日で完結するように勉強計画を立てることも可能だろう。
だがこの方法は、相当の実力者が夏以降にやる分には良いが、初学者にはさすがに荷が重い。
また各年度、50点中で何点とれたかを採点することにより、それがモチベーションにつながるともいえる。
年度ごとの合格基準点が明記されているので、大方の難易度も分かる。
ただし、各年度の問題を繰り返し解いても、本当に意味があるのは最初の点数だけだが、、
──特化型の勉強法
知識を定着させるには、各項目に特化した勉強をしなければならない。
これを年度別で実践しようとすると、相当な工夫が必要となる。
お目当ての項目の問題を探し出し、一つずつ抜き出さなければならないからだ。面倒なことこの上ない。
だから年度別は、今日は令和元年の過去問(50問)を解き、明日は平成30年の過去問を解く。次は平成29年、その次は平成28年、、といったやり方で解いていくのがベターだ。
しかしこのやり方では、いつまで経っても一つの項目に特化した学習にはならない。全項目をバランスよく勉強するといえば聞こえは良いが、特定の項目を得点源にはしにくい。
これといった武器が作れないのだ。
それでも26~45の業法だけを取り出して、それを数年分まとめて解けば、いくらか効果はあると思う。
ただ本試験では、30番がどんな項目で、35番がどんな項目とか決まっているわけではない。
同じ30番の問題でも、報酬額の制限のときもあれば、重要事項説明や37条書面に関する問題の場合もある。
問題番号から何の項目かを推測することは、民法の特別法(借地借家法など)や、税・免除科目などを除いてほぼ不可能といえる。
だからこそ、年度別ではなく分野別を用いて、項目ごとの強化を図らなければならないのだ。
そういう特化型の勉強をやらずに、各年度の問題を解いて一喜一憂する勉強法には「落とし穴」があると言わざるを得ない。
分野別ではなく、年度別過去問集を用いて勉強している人(勉強する予定の人)に問いたい。
「35条書面や37条書面に特化した勉強はいつやるのか?」
「開発許可に特化した勉強は?」
「建築確認に特化した勉強は?」
今現在、分野別過去問集を使っている人、これから使う予定の人ならば、これらに特化した勉強は既にやっているか、今後必ずやることになる。
だからこれらの項目の問題も難なく解けるか、黙っていてもやがて解けるようになる。
初学者の方はもちろん、昨年、年度別を用いて合格できなかったリベンジ組の方々も、今年は分野別過去問集を使うことを強くオススメする。
近年の宅建試験は、項目ごとの掘り下げが深く、特化型の学習を取り入れなければ十分な得点が見込めない。年度別では、それが困難なのだ。
それぞれの項目を、ローラー作戦のように連続して潰していく。そうやって各項目を押さえていく。年度別ではそれは叶わない。
それが可能なのは、ウォーク問のような「分野別過去問集」だけである。