──小学6年生
いよいよ健斗も、最上級生の小学6年生となった。友達の中には、中学受験を目指している子もいるが、健斗は宅建合格を目指す!
内心は複雑だったと思う。健斗の成績は、学年でも上位3本の指に入るほどだったから、、
始業式の次の日には、クラスで学級4役を決める選挙があり、またしても学級委員長に選ばれた。小4から3年連続の学級委員長だった。
こうして健斗の小学6年の学校生活は幕を開けた。クラスには仲のいい友達も何人かいて、幸先のいいスタートが切れたと思う。
──予備校のオープン模試
委員会活動の他に、5月には運動会もあって、健斗は慌ただしい日々を過ごしていた。
そんな中、岡崎市にある総合資格学院で、受講生以外でも参加ができる宅建の「無料オープン模試」が6月に行われることを知った。
健斗にはその旨を伝えた上で、早速応募することにした。
これまで市販の宅建模試は何度か解いてきたが、予備校主催の会場模試は一度も受けたことがなかった。
昨年、本試験を受けたとはいえ、時間内に問題を解くいい練習になるだろうと私は思った。
そしてオープン模試当日。
時間は、本試験と同じ午後1時から3時までの2時間だ。
まだ時期的に早いのか、模試を受けにきた人は数人程度だった。
すでに本試験を経験している健斗は、緊張することなくオープン模試に取り組んだようだ。私はその間、別室で待機していた。
2時間が経過しても健斗が戻ってこないので、様子を見にいくと、講師の方が答案用紙を採点していた。
本来ならば2週間後に郵送のはずなのだが、人数が少なかったのでその場で採点してくれたのだ。
健斗の分を採点し終わると、講師の方は目を白黒させながら健斗に答案用紙を返却した。
「君、本当に小学生?」
そう呟いて渡された答案用紙には、
「41点」
と赤ペンで記されていた。
どうやら今日参加した受験生の中では最高得点だったらしい。
そして私は、昨年の本試験が2点足りなかった話や、市販模試の最高が40点だった話などをその講師に伝えた。
会場を後にして自宅に戻ると、その夜からまた、いつものように日建の『一問一答777』を使って宅建の勉強を続けていった。
──苦渋の決断
私は健斗に、LECの『ウォーク問』も並行してやるように促したが、飽きたのか、どうも乗り気にならない。
仕方ないので、しばらくは一問一答だけで勉強していくよう助言した。
次の日曜日、私は健斗を誘って、再び市内の書店へと向かった。
健斗は日建がお気に入りだったので、同じ日建の『基本テキスト』と『どこでも過去問』(分野別の3冊)を手に取り、どう思うか訊ねた。
*どこでも過去問は2021年版からタイトルを『テーマ別 厳選過去問』とし、問題数を減らして一冊本になった。
「これ見やすい。買ってくれるの?」
やはり予感は的中した。健斗には日建が合っているのだ。
本来ならば、年度の途中で教材を変えることは御法度だと思う。
しかし、このままモチベーションが低下することを恐れた私は、LECから日建へシフトすることを選択した。
苦渋の決断だった。
日建のテキストと過去問の計4冊をその書店で購入し、その日から健斗は、心機一転、改めて宅建の勉強をスタートさせた。
ただ日建のテキストは『とらの巻』より分厚いので、過去問の解説が分からないときに、辞書のような使い方をするようアドバイスした。
日建のどこでも過去問(旧版)は、ウォーク問と違って2色刷りである。小学生の健斗には、やはり色の付いた教材の方が合っているようだ。
ウォーク問の復習に難色を示していた健斗だが、どこでも過去問では自ら進んで勉強していく姿勢が見てとれた。
低下しかけていたモチベーションがまた復活したのだ。
このままの勢いで約一ヶ月、夏休み前まで『どこでも過去問』❶権利関係編を中心に勉強を続けていった。