──LECの宅建0円模試
総合資格学院のオープン模試から約一ヶ月。次は大手予備校のLECが主催する「宅建0円模試」を、LEC名古屋駅前本校で受けることにした。
その名の通り無料で受けられるオープン模試だ。夏休みに入る直前の日曜日だったと思う。
さすがにLECは大手だけあって、受験生の数が半端なく多い。
特に、スーツ姿の会社員やOLが多かった。大半はLECの受講生のようだ。
机の上の教材を見れば分かる。
私は教室の出入口の外から見ていたのだが、そんな大人たちに混じって、私服の小学生がポツンと一人。
すごい違和感、、
「なんで子どもがいるんだよ?」
何人かの受験生が、不思議そうに健斗を見ていたのが印象的だった。
だが健斗本人は、そんな視線は昨年の本試験で経験済みなので、特に動揺することもなかったようだ。
0円模試の時間帯も、本試験と同じ午後1時から3時までの2時間だ。しかもLECの模試は、高品質かつ本試験に近いと評判である。
ここで高得点を叩き出せば、合格をグッと引き寄せることができる。
午後3時に試験が終わると、マークシート用紙が一斉に回収され、直後に、答えと解説が印刷された冊子が受験者全員に配られた。
それを見ながら答え合わせをしていた健斗が、数分後に教室に入っていった私に向かってこう言った。
「権利関係、全部できたよ」
「え?」
宅建業法ならまだしも、難しい権利関係が全問正解なんてあり得ない。
私は、健斗が問題用紙に付けた印と冊子の正解番号を照合してみた。そしたら本当に、権利関係は14問すべて正解だった。
この話を隣の席で聞いていた大学生風の男性も、驚いた様子で健斗の方を見ていた。
そういえば総合資格のオープン模試以降、『どこでも過去問』で権利関係を重点的に勉強していたっけ。
こんなに早く結果が出たことに、私自身、にわかには信じられなかった。
ただ後日、LEC講師陣の0円模試の総評から、権利関係は全体的に易しかったことを知った。
反対に、業法と法令からの取りこぼしが目立ったのは反省点だった。
自己採点の結果は、
「40点」
総合資格の時より1点下がったが、まずまずの出来だったと思う(後日、郵送されてきた成績表も40点だった)。
──勝負の夏休み
毎年健斗は、夏休みの宿題は7月中に終わらせるのが常である。今年もそれは変わらない。
ただ自由研究だけはどうしても時間がかかるため、本当はいけないことだが、私が受け持つことにした。
材料をホームセンターで調達し、ほぼ一日がかりでスライド式「本立て」を完成させた。
一部の色塗りだけは健斗に任せた。だから一応、親子の合作である。
8月に入ると、『どこでも過去問』の❷宅建業法と❸法令上の制限・税その他を重点的に押さえることを目標に勉強に取りかかった。
しかし、どうしても覚えにくい箇所がある。これには当の健斗自身も途方に暮れていた。
宅建業法の「重要事項説明書」と「37条書面」、法令上の制限の「建築基準法の用途規制」である。
私を含め、多くの受験生の方々もそうだと思うが、この3項目はテキストをただ眺めているだけでは覚えられないし、本当に厄介だ。
そこで登場するのが、『パーフェクト宅建の要点整理』という住宅新報出版から出ている要点まとめ用のテキストである(注・2022年版から『パーフェクト宅建士 宅建合格塾 完全要点マスター』という名称に変わった)。
有名な『パーフェクト宅建士 基本書』とは異なるのでお間違えなく、、
要点整理といっても、文章はしっかりしているし、通常のテキストとしても使えるすぐれもの。
私がまだ受験生だった頃、宅建試験の合格体験記でこの要点整理を強烈に推している人がいたので、試しに購入してみたら大当たりだった。
私は上記3項目の箇条書きされた表をカラーコピーして毎日持ち歩き、会社の休み時間など暇があれば取り出して覚えていたものだ。
私は健斗に『要点整理』の2014年版を買い与え、やはりカラーコピーしたものを覚えるように助言した。
物覚えのいい健斗は、それらコピーしたものをほぼ一日で覚えてしまったようだ。私は3項目をすべて覚えるのに一週間以上かかったのに、、
ともあれ8月は、『どこでも過去問』の❷❸を95%以上正解することが目標だったので、クリアできるまで何度も何度も繰り返した。
❶権利関係編だけは、LECの0円模試の結果が良かったので必要ないと思い、8月は手を付けなかった。
──それ以外の出来事
健斗が通っている小学校と同じ町内に別の小学校がある。そこで毎年お盆の夜に「盆踊り大会」があり、家族で出かけたりもした。
夜店も出ているので、みたらし団子やフランクフルト、かき氷などをみんなで食べた。
事前に町内会から配られていた抽選券でパナソニックの「高級ドライヤー」をゲットし、健斗が盆踊り大会の舞台の上で景品を受け取った。
「今年はついているかも」
そんな思いが頭をよぎった。
また8月下旬には、TACの最新の市販模試を3回分解いた。40点、38点、41点だった。
TACは日建に比べるとやや難しいが、各模試に記されているTAC基準の合格ラインはクリアしていたので、とりあえず良かったと思う。
こうして夏休みも無事終わり、運命の2学期に突入する。
平成26年度の宅建試験は、10月19日(日)に行われる。願書の提出は、すでに7月のうちに済ませてある。
宅地建物取引主任者としての試験は今回で最後だ。平成27年度から「宅地建物取引士」試験へと名称が変わる。
私は健斗に言った。
「取引主任者最後の試験だ。中学になったら中間テストや期末テストがあって、思うように勉強時間が作れない。委員会や部活動で帰りも遅くなる。だから今年は最後のチャンスだと思う。絶対に合格しような」
健斗は軽く頷いたあと、
「絶対に受かってみせる!」
と力強く言い放った。
その自信に満ちた健斗の顔を見て、今年こそは本当に合格できるんじゃないか、と私は強く思った。