──当たって砕けろ
この時期、こんな言葉がよく耳に入る。
「もう間に合わないかも、、」
せっかく合格を目指して頑張ってきたのに、そんな弱音を吐いてどうするの?
ここで諦めてしまって本当にいいの?
模試で半分以下の点数しか取れなかったとしても、諦めるにはまだ早い。
仮に、合格できなかったとしても、本試験を経験したという事実が残る。
これは他に変えがたいものだ。
あの独特な雰囲気を経験していれば、来年受けた時にプレッシャーが半減する。より合格しやすくなる。
経験をお金で買うのだ。結果が悪くたっていい。この際、結果は二の次である。
何もしないで静観するより、行動を起こして砕け散った方が10倍、いや100倍マシだ。
──本試験会場での奇妙な出来事
私が本試験を受けた当日、私の席の左斜め前に、初老のくたびれた感じの男性がいた。
リュックから過去問でも取り出すのかと思いきや、ジュンク堂と書いてある紙袋を取り出し、その中から帯付きの『らくらく宅建塾』の真新しいテキストが出てきた。
どうやら、この会場に来る途中でジュンク堂へ寄って買ってきたようだ。
そしたら次に、ペンケースの中から黄色いマーカーを取り出し、おもむろに最初のページから塗り始めたのだ。
「おいおい、まさか今から勉強開始か?」
しばらく見ていると、
「う~ん、難しいなぁ」
などと独り言をつぶやいている。どうやら本当に、今から勉強を始めた模様。
まさか本試験が始まる直前に、しかも試験会場で初めて宅建の勉強を開始するなんて、、
「このおっさん、宅建試験を舐めてるな」
と私は思った。しかし一方で、
「もしかしたら只者ではないのかも」
とも思った。摩訶不思議な光景だった。
合格発表の日、インターネットで私の受験番号を確認したとき、その初老の男性の合否も気になったのでついでに調べてみた。
合格者の中に私の受験番号はあったが、その初老男性の番号は案の定なかった。
私の番号の前10人と後15人が不合格だったのだから間違いない。
言い方は良くないが、こんな人でも本試験を受けにきていたのだ。だから皆さんも、合否にこだわらず本試験だけは受けてほしい。
もちろん、合格に手が届きそうな人は、頑張って合格をつかみ取ってもらいたい。
──最後まで諦めるな
毎年、約2割もの人が、受験料を支払ったにもかかわらず本試験を受けないでいる。
お金がもったいない、だけではない。
本試験会場で独特の雰囲気を味わうチャンスを捨て、2時間で本試験問題を解き切る感覚さえ放棄する。
言葉はキツいが、敵前逃亡と同じことである。そんな人生で良いのか?
とにかく本試験だけは受ける。合否に関係なく、逃げないで受ける。こういうポジティブな姿勢が、合格を引き寄せるのだ。
初受験が20点に満たない人が、翌年には合格基準点を上回った例などいくらでもある。
本試験を受けなければ、この先の展望が見えてこない。受ければ、この先やらなければならないことが絞られてくる。
目標が明確になるのだ。だから諦めずに、本試験だけは受けてほしい。