──はじめに
2月下旬、今年も吉野塾の吉野先生から「宅建士 出るとこシリーズ」の最新版をご恵贈いただいた。
『出るとこ集中プログラム』は4年連続、『出るとこ10分ドリル』は3年連続のご恵贈である。
これに先がけ昨年12月、名古屋のセミナーで吉野先生と初めてお会いし、いろいろお話できたのは私の中ではかけがえのない財産となった。
この場をお借りし御礼申し上げたい。
今回、吉野先生の「出るとこシリーズ」をオススメするのはこういった経緯があるからではない。
私は以前から、初学者に適切な宅建教材として次の3つを推奨している。
・宅建士 合格のトリセツ 基本テキスト(東京リーガルマインド/LEC)
・らくらく宅建塾(宅建学院)
・宅建士 出るとこ集中プログラム(中央経済社)
実際に書店に足を運び、数多の宅建書籍を手にして調査した結果であり、この点は一昨年から変わっていない。
それでは、吉野先生の出るとこシリーズを順に解説していこう。
──出るとこ集中プログラム
市販の宅建テキストの中で、初学者向けで、しかも通読に適したものとなるとそれほど数は多くない。
吉野先生の『出るとこ集中プログラム』には他にはない特徴がある。
全体のページ数が、トリセツが約600ページ、らくらくが約500ページなのに対し、この出るとこ集中プログラムは約340ページしかないのだ。
通常、これくらいのページ数だと通読本ではなく要点まとめ的な本になるはずだが、出るとこ集中プログラムはそうはなっていない。
もちろん図や表も豊富だが、あくまでも本文がメインである(有名な“みんほし”は本文より図表がメイン)。
にもかかわらずこのページ数!!
情報量も不足せず、上記トリセツやらくらくと比べても遜色ない。
前書きにもあるが、直近8年分の本試験で40〜42点を得点できるだけの情報量が本書には収められている。
特に権利関係が異色の出来で、隅々まで理解・記憶できれば大きなアドバンテージとなることは間違いない。
各セクションの終わりに、内容が理解できているかどうかをチェックする一問一答も用意されている。
一問一答は全部で261問あり、市販の宅建テキストとしては多い方である。
──出るとこ10分ドリル
出るとこ集中プログラムの姉妹品として、一昨年から『出るとこ10分ドリル』がラインナップに加わった。
総ページ数は約230ページで、各テーマごとに
・ドリル① 空欄を埋めなさい
・ドリル② 間違いを直しなさい
・ドリル③ 過去問・他資格試験問題にチャレンジ!
と3種のドリルで構成されている。
中でもドリル①が秀逸で、条文の穴埋め問題を中心に編集してある。
この穴埋めができるようになれば、別途、法律学習には欠かせない条文素読をしなくても良いくらいだ。
ドリル②は、いわばドリル①の確認問題で、本書のキモともいえるドリル①を補強するものである。
つまり「間違い探し」の一種だが、宅建試験自体が間違い探しのようなものなので、実践トレーニングだと思って解いてみてほしい。
そしてドリル③で、ようやく通常の過去問が登場する。
2023年版から、近年の難化傾向を考慮してか、司法試験問題を皮切りに他資格の問題の肢などが追加された。
これによって、宅建試験に限定されない幅広いリーガルマインド(法的思考力)が養えるようになるはずだ。
──10分ドリルの補足
上記トリセツやらくらくの基本テキストは初学者向けだが、集中プログラムは初学者から中級者、10分ドリルは中級者向けの教材だと思う。
その理由として、集中プログラムは権利関係の掘り下げがやや深く、10分ドリルの穴埋めは初学者には少しハードルが高いと感じたからだ。
もちろん初学者でも根気よく学習を続けていけば、10分ドリルをマスターすることは十分可能である。
正答率の低い問題でも、案外、条文知識ですんなり解けたりするもの。
合格レベルにある他の受験生との差別化を図りたければ、通常の過去問演習に加え、頻出条文を頭にインプットしていくことが効果的だ。
その際、条文を素読するのではなく、条文中のキーワードを穴埋めにして解いた方が記憶に残りやすい。
10分ドリルは、その目的を達成するための最適な教材といえる。
特に民法は、行政書士や公務員試験といった他の法律系資格を目指している人にも役立つだろう。
10分ドリルに似た市販書籍が他に見当たらないため、個人的には希少価値の高い教材だと思っている。
──おわりに
近年の宅建テキストはどれも分厚く、それだけで気後れしてしまう受験生も少なくないはずだ。
テキストの分厚さがハードルとなり、読み始める前から最後まで読み通す自信がなく諦めてしまうパターン。
こんな受験生をこれまでどれだけ見てきたことか、、
出るとこ集中プログラムは、他の平均的な宅建テキストの6割前後のページ数しかない(約340ページ)。
かといって、ところ狭しと文字がぎゅうぎゅう詰めになっているわけではなく、青色効果もあってか、非常にすっきりとまとめられている。
それ故、このテキストで挫折するくらいなら宅建のような資格試験には恐らく向いていないと思う。
ただ私の主張する勉強法では一問一答が不可欠なので、これとは別に一問一答集も用意しなければならない(テキスト内の一問一答だけでは足りない)。
私の勉強法と関連付ければ、テキストと一問一答は同じ出版社の同じシリーズのものが相応しい。
その点を度外視すれば、出るとこ集中プログラムは申し分のない素晴らしい出来のテキストだといえる。
個人的には、日建学院の一問一答と相性が良いように感じる。
そのへんの判断は受験生の皆さんにお任せしたい。
とにかく、まずはテキストと一問一答で盤石な基礎力を養ってほしい。
それこそが合格をたぐり寄せる最短ルートになると私は信じている。