──はじめに
今春も吉野塾の吉野先生から、宅建士 出るとこシリーズの最新版をご恵贈いただいた。
『出るとこ集中プログラム』は3年連続、『出るとこ10分ドリル』は2年連続のご恵贈である。
2023年版はどちらも桜色(ピンク)を基調とした表紙になっている。
吉野先生には、この場を借りて御礼申し上げます。
いつものことながら、ご著書の最初のページを開くと吉野先生の直筆サインが添えられていた。
こういった経緯があるから吉野先生の教材をオススメするのではない。
私は以前から、初学者に適切な教材として次の3つを推奨している。
・宅建士 合格のトリセツ 基本テキスト(東京リーガルマインド/LEC)
・らくらく宅建塾(宅建学院)
・宅建士 出るとこ集中プログラム(中央経済社)
実際に書店に足を運び、数多の宅建書籍を手にして調査した結果であり、この点は昨年から変わっていない。
それでは、吉野先生の出るとこシリーズを順に解説していこう。
──出るとこ集中プログラム
市販の宅建テキストの中で、初学者向けで、しかも通読に適したものとなるとそれほど数は多くない。
先の3種のテキストの中の一つ『出るとこ集中プログラム』には他にはない特徴がある。
全体のページ数が、トリセツが約600ページ、らくらくが約500ページなのに対し、この出るとこ集中プログラムは約340ページしかないのだ。
通常、これくらいのページ数だと通読本ではなく要点まとめ的な本になるはずだが、出るとこ集中プログラムはそうはなっていない。
もちろん図や表も豊富だが、あくまでも本文がメインである。
にもかかわらずこのページ数!
情報量も不足せず、上記トリセツやらくらくと比べても遜色ない。
前書きにもあるが、直近7年分の本試験で40〜42点を得点できるだけの情報量が本書には収められている。
特に権利関係が異色の出来で、隅々まで理解・記憶できれば大きなアドバンテージとなることは間違いない。
各セクションの終わりに、内容が理解できているかどうかをチェックする一問一答も用意されている。
一問一答は全部で264問あり、市販の宅建テキストとしては多い方である。
──出るとこ10分ドリル
出るとこ集中プログラムの姉妹品として、昨年から『出るとこ10分ドリル』がラインナップに加わった。
総ページ数は約230ページで、各テーマごとに
・ドリル① 空欄を埋めなさい
・ドリル② 間違いを直しなさい
・ドリル③ 過去問にチャレンジ!
と3種のドリルで構成されている。
中でもドリル①が秀逸で、条文の穴埋め問題を中心に編集してある。
この穴埋めができるようになれば、別途、法律学習には欠かせない条文素読をしなくても良いくらいだ。
ドリル②は、いわばドリル①の確認問題で、本書のキモともいえるドリル①を補強するものである。
つまり「間違い探し」の一種だが、宅建試験自体が間違い探しのようなものなので、実践トレーニングだと思って解いてみてほしい。
そしてドリル③で、ようやく通常の過去問が登場する。
2023年版から、近年の難化傾向を考慮してか、司法試験問題を皮切りに他資格の問題の肢などが追加された。
これによって、宅建試験に限定されない幅広いリーガルマインド(法的思考力)が養えるようになるはずだ。
──10分ドリルの補足
上記トリセツやらくらくの基本テキストは初学者向けだが、集中プログラムは初学者から中級者向け、10分ドリルは中級者向けの教材だと思う。
その理由として、集中プログラムは権利関係の掘り下げがやや深く、10分ドリルの穴埋めは初学者には少しハードルが高いと感じたからだ。
もちろん初学者でも根気よく学習を続けていけば、10分ドリルをマスターすることは可能である。
正答率の低い問題でも、案外、条文知識ですんなり解けたりするもの。
合格レベルにある他の受験生との差別化を図りたければ、通常の過去問演習に加え、頻出条文をインプットしていくことが効果的だ。
その際、条文を素読するのではなく、条文中のキーワードを穴埋めにして解いた方が記憶に残りやすい。
10分ドリルは、その目的を達成するための最適な教材といえる。
特に民法は、他の法律系資格を目指している人にも役立つだろう。
こういった10分ドリルに似た市販書籍が他に見当たらないため、希少価値の高い教材だと思う。
▶宅建公塾(ハム塾)
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