──3大分野の重要度
宅建試験の「3大分野」といえば、権利関係・宅建業法・法令上の制限のことである。
この3大分野で苦手を作らない、とはよく言われることだ。これらのどれか一つでも苦手にしていたら、確かに合格は厳しいと思う。
だが、そのことが脳内に刷り込まれ、「どれも満遍なくモノにしなければならない」と思い込んでいたら、それは少し違うのではないか?
苦手分野を作らない=バランスよく学ぶ、とは必ずしもならないからだ。
私が唱えた「勝利の方程式」は、まず最初に一問一答式をマスターし、次いで四択過去問に移るというもの。
一問一答集は、3大分野がもともと一冊に収められているので、初めからバランスは取れている。
それを最初から順に解いていけば、特に意識しなくても全体をフラットに勉強したことになる。
しかし問題は、次の四択過去問に移ってからだ。
かねてより私は、過去問は95%以上の正解率を目指すように訴えてきた。
だがこれは、全体としてのパーセンテージであって、すべての分野、すべての項目でそれを求めてはいない。
例えば権利関係。
この分野は難しい問題も多く、必ずしも95%は必要としない。
LECの『ウォーク問❶権利関係』でいえば、レアなC問題が16題ある。全体の問題数が169題だから、約1割だ。
C問題を除き、残りの特A、A、Bだけだと90.5%にしかならない。
この権利関係で95%以上を目指すのなら、当然C問題もいくつかモノにしなければならない計算となる。
税も、C問題を除けば95%に届かないし、譲渡所得は難易度が高いので、C問題以外であっても時間のない人は手を付けない方がいい。
対して宅建業法は、95%の正解率では足りない。
近年、個数問題が増えてきた点を考慮すれば、『ウォーク問❷宅建業法』は100%の正解率を目指した方がよい。
実際、業法の過去問で95%正解していた受験生が、本試験では13/20点しかとれなかった例が一昨年にあった。
業法は引っ掛け問題が多く、少しでも曖昧なまま本試験に臨んだらこういうことにもなりかねないのだ。
だからこそ、業法は正解率を100%にしなければならないのである!
──業法を得点源にせよ
一応、3大分野の過去問の目標正解率を示しておくので参考にしてほしい。
・権利関係→90%以上
・法令上の制限→95%以上
・宅建業法→100%
一見して分かるように、3大分野の中では宅建業法だけが100%で、権利関係が90%以上、法令上の制限が95%以上である。
私は全体として95%以上の正解率を主張してきたが、小分けするとこんな感じになる。
中でも宅建業法は、問題数が多いにもかかわらず100%である。合否を分ける分野の一番手は、権利でも法令でもなく業法なのだ。
業法で18点以上とれている受験生の合格率は、恐らく5割を超えている。逆に、権利や法令で高得点をキープしても業法がダメなら落ちてしまう。
業法を得点源にするには、過去問は正解率100%が必須条件である。
直前期になって、権利も業法も法令も免除も、どれも未完成で諦めモードになってしまった受験生は、宅建業法だけに絞って勉強してみてほしい。
仮に、今年の合格基準点が35点だったとしよう。
権利7点(半分)、法令4点(半分)、税その他4点(半分)しかとれなかったとしても、業法が満点ならば合格なのだ。
反対に、業法が10点(半分)だった場合、他の分野がトータルで8割とれていても不合格である。
業法を得点源としなければならない理由は、まさにここにある。
「どの分野も満遍なく学習する?」
「勉強はバランスが大切?」
こんな優等生的な言葉に騙されてはいけない。どんな試験にも戦略があるように、宅建試験にも戦略が必要だ。
私の場合、本試験の前日には、業法の一問一答だけを何度も回していた。
業法独特の引っ掛けにやられないように、業法を反射的に解けるように。
その甲斐あってか、本試験の業法では19点とることができた。
これが私の戦略であり、今年の受験生、いや来年以降の受験生にも通じる普遍的な戦略になるだろう。
満遍なく学習するのは、一問一答だけで十分だ。四択の過去問では、上記のように「宅建業法」に特化した学習をしてほしい。
極端にいえば、過去問は、宅建業法さえ100%を達成できたのなら他は90%未満でも構わない。
それが戦略であり、それが宅建試験に合格するための秘訣でもある。
最後にもう一度いうが、合否を決定づけるのは権利でも法令でも税でも免除でもない。
「業法、業法、業法!!」
これだけは肝に銘じておいてほしい。