──積み上げの大切さ
宅建試験に限らず、資格試験全般にいえることだと思うが「積み上げ」が大切である。
これまで解いてきた過去問の数、吸収できた論点の数が最終的にはモノをいう。
そこに野球でいう満塁ホームランのようなものはない。どちらかというと、コツコツと1点ずつ積み上げていくサッカーに近い。
言うなれば足し算である。
私は自身のブログの中で、一問一答の正答率や四択過去問の正解率を95%以上にするように述べてきた。
だが、それは足し算ではなく割り算だ。
例えば、1,200問の一問一答を解いて、984問正解だったら、正答率は82%ということになる。
984÷1,200=0.82(82%)
これを割り算として捉えず、1,200問中で984問正解できた→つまり足し算として、それだけの積み上げができたんだと考える。
その方が達成感があるのではないか?
これと同じようなことを、かのイチロー選手も言っていた。
彼がまだメジャーリーグへ行く前の、日本のオリックス・ブルーウェーブ(現オリックス・バファローズ)で活躍していた頃に話していたことだ。
「打率だと打った打たないで数字が上下するが、安打数ならば足し算だから数字が減ることはない」
打率ではなく、安打数を意識してシーズンを通して頑張ってきたということ。
そうやってイチロー選手は、日本のプロ野球で、7年連続でパ・リーグの首位打者を獲得してきたのだ。
宅建試験の勉強にも同じことがいえる。過去問の正解率を弾き出すことも大切だが、日々の勉強へのモチベーションを維持することが何より大切である。
そのためには、過去問の正解率より、これまで正解してきた「過去問の数」を自身の成果とした方が効果的ではないか?
もっとも過去問の場合は、正解数が減ることもあり得るので、イチロー選手の言葉をそのまま当てはめることはできない。
だが正解率に一喜一憂するより、正解した問題の数(積み上げてきた数)を自分自身の成果とした方が、自信にもなり、モチベーションも維持できる気がする。
タイトルにもあるように、石垣を積み上げるように日々の学習を進めていってほしい。
──過去問のスキマを埋める
宅建試験において、過去問学習が大切なことは誰もが知るところである。
しかし宅建試験の出題範囲において、すべてが過去問で網羅できるわけではない。
宅建業法や法令上の制限、統計を除いた免除科目あたりは、過去問のみで8~9割はカバーできるが、権利関係はそうはいかない。
恐らく5~6割ほど。だから権利関係においては、テキストの読み込みも重要となる。
全体として、過去問のみでカバーできるのは7割前後。いわゆる焼き直し問題である。
宅建業法が一番焼き直し率が高く、平均すると9割を超え、法令制限で8割ほどだ。
それらをイメージするとこんな感じ。長方形の枠が出題範囲、楕円が過去問である。
過去問を数多く解いてマスターすれば、長方形の枠の中は埋まっていく。
5~6年分の過去問ではまだスキマだらけだが、10~12年分の過去問をこなせば図のような感じになると思ってよい。
地頭のいい人ならば、過去問から類推してスキマを埋めることが可能かも知れないが、我々凡人はそうはいかない。
だからテキスト等を読み込んで、スキマを埋めていく作業も必要となる。
権利関係はもちろんだが、他の分野もそれについては例外ではない。
ただ、今から分厚いテキストを読んでいくのは合理的とはいえない。過去問にない論点をテキストで補っていくには、重要ポイントに絞ったものが適切である。
スキマの多くは、重箱の隅をつついたようなレアな問題ではない。基本的な問題なのに、これまで何故か過去問では問われなかった問題がほとんどだからだ。
スキマを埋めるには、短期決戦型の教材がふさわしい。昨年までは、LECの『とらの巻』を第一にお薦めしてきた。
とらの巻の場合、法改正が万全なところが一番の利点だが、通読用としてはやや大部なため(約500ページ)、私は主に調べるための教材として用いていた。
通読用としては、次の教材がお薦めだ。
▪宅建士 出るとこ集中プログラム(中央経済社)
市販のテキストの中ではページ数も少なく、わずか340ページ足らずである。にもかかわらず、この一冊の中に40点以上を狙える情報量が詰め込まれている。
かといって、文字ばかりで息苦しくなるようなテキストではなく、非常に読みやすいところが特徴だ。まさに通読向き。
各セクションごとに「一問一答」が添付されていて、理解の助けになっている。図や表も多く、視覚的にも分かりやすい。吉野先生の会心の一冊といってよいだろう。
まとめ本としては、次の教材がお薦めだ。
▪宅建みやざき塾 超重要ポイントまとめ集
言わずと知れた「宅建みやざき塾」の短期決戦用のまとめテキストだ。市販教材ではないが、塾生以外でも、みやざき塾のstoresから購入することができる(3,800円)。
https://miyazakijuku.stores.jp/items/60d99b94a1ea7c3ebf2287c5
通読用というより「要点まとめ」といった感じのテキストで、図や表、イラストが全体の半分以上を占めている。
A4サイズの大型テキストだが、総ページ数が、たった115ページしかないところもやる気に拍車をかける。
一通り過去問学習を終えた後に、知識の見落としがないかどうか、つまりスキマを埋めていくのに非常に効果的である。
──終わりに
たとえギリギリでも、宅建試験に合格することだけが目的なら、私は過去問オンリーでも何とかいけると思っている。
ただし過去問演習をする過程で、解説部分もしっかり読み込まなければならない。正解肢を選んで終わり、というのが一番まずい。それでは理解したことにならないからだ。
解説を読んで理解を深め、疑問点があればテキストに戻って調べる。そこまでやれて、ようやく過去問を制したといえる。
単に一問一答の◯✕が正解だった、四択過去問の正解番号を言い当てた、だけでは過去問を制したとはいえないのだ。
宅建試験の高得点化が叫ばれているが、そうなるとわずかな失点が命取りになりかねない。ギリギリを狙うとこういうリスクと向き合わなければならなくなる。
ケアレスミスが許されなくなるのだ。
そういう意味でも、過去問+α の取り組み、すなわちスキマを埋める対策をした方が、より合格を確実なものにできると思う。