──お薦めのまんが本
活字離れが叫ばれて久しいが、宅建のような法律系の資格試験でさえ「まんが本」がいくつも書店に出回るようになった。効果はもちろんあると思うが、それを使う人や時期にもよる。
基本的には、中級者以上の人は使うべきではない。使っていいのは法律の初学者か、法律から遠ざかっている人、あるいはリベンジ組で昨年30点に届かなかったような人だ。
使っていい時期は、基本的には夏頃まで。その後も、時おり見直す程度なら問題ない。
LECの『とらの巻』や、『らくらく宅建塾』でさえ難しいと感じる人が、そういったテキストに入る前の「導入本」といった位置付けだ。
宅建試験の勉強で、まんが本の効果が最大限に発揮されるのは「権利関係」であろう。
ただでさえ複雑な権利関係(民法)を、まんがを通して視覚的にインプットできれば、その後活字のテキストに移行してからもスムーズに学習が進むものと思われる。
逆に「宅建業法」や「法令上の制限」は、まんが本に頼らずにそのまま活字のテキストから読み進めた方がいい、というのが私の考えだ。
業法や法令は暗記しなければならない項目も多く、まんが本でそれを表現しようとすると、どうしても無理やり感が出てきてしまう。
かえって活字のテキストの方が記憶に残りやすいと思う。
権利関係のような複雑な内容を紐解くには「まんが本」がいいし、その他、多くの暗記ものを頭に定着させるには「活字テキスト」の方が使いやすい。
ご存知のように、今年度から宅建試験でも、改正民法での出題となる。債権を中心に、相続などでも大きな法改正があった。
例年以上に、権利関係に力を入れて本試験に挑む人は増えるはずだ。
これまでの、
「業法と法令で攻め、権利で守る」
という宅建試験の原則が崩れるかも知れない。だからこそ、権利関係は早いうちに着手し、苦手意識を克服しておかなければならないのだ。
私が一番にお薦めする「まんが本」はこれ。
・これだけ まんが宅建士 [権利関係編] 2020年度版(建築資料研究社/日建学院)
このまんが本は、全3分野のうち「権利関係」を取り扱ったもので、現時点で私が一番に推薦するものである。
全編ほぼまんがだけで構成されており、よって内容は浅めだが、最重要部分をまんがを使って分かりやすく解説してある(民法改正に対応)。
活字のテキストを読んでいて、何が重要で何が重要でないのかさえ分からず迷子になっている人には、最重要部分が理解できるだけでも意味はある。そういう人にこそ、このまんが本をお薦めしたい。
私的には権利関係編が一冊あれば十分だと思うが、興味があれば「宅建業法編」と「法令上の制限・税その他編」を購入しても構わない。ただし、なるべく夏頃までには読破するように心掛けてほしい(12月受験の人は別)。
──その他のまんが本
上記のまんが本以外で、皆さんにお薦めできるものがあるとすればこれである。
・マンガ宅建塾 2020年版(宅建学院)
こちらのまんが本は、権利関係に絞らず全分野が一冊に収まっている。日建のまんが本と違って全編がまんがではなく、4コマまんが+活字での説明という構成だ。
こういうタイプのまんが本が主流だと思うが、それらの中では一番分かりやすい。
値段がやや高いのが難点だが、この本の権利関係だけを読み込むのもよし、それ以外の分野も含めて全ページ読み切るのもよし。
いずれにせよ、読めばそれなりに効果があるのは確かであろう。
他にも何種類かまんが本は出ているが、どれも目立った特徴はなく一長一短だ。
ユーキャンに日経、住宅新報、西東社、成美堂あたりも一応手にしてみたが、上記の2社と比べるとどうしても見劣りがする。
私個人はお薦めしないが、フィーリングが合えば使ってもいいと思う。