──シリーズの締めくくりに
16記事に及んだ「改正民法の条文穴埋め&一問一答」シリーズも、今回で正真正銘、最後となる。
締めは家族法の「相続」だが、改正テーマは3つある。
それらの内、新設された配偶者居住権と配偶者短期居住権の2つの重要テーマについては、最初に簡単な「要点まとめ」を置くことにした。
最低限の理解がないと、条文穴埋めにも苦慮するだろうと思ったからだ。
もう1つの遺留分侵害額請求権(旧民法の遺留分減殺請求権)については、基本的な事項をテキストで学んでおけば、改正点も少ないし、いきなり条文穴埋めから入っても大丈夫だろう。
──配偶者居住権と配偶者短期居住権の条文穴埋めに入る前に…
平成30年の民法改正に伴い創設された被相続人の配偶者(生存配偶者)の居住権を保護する制度である。長期的に保護するのが「配偶者居住権」、短期的に保護するのが「配偶者短期居住権」だ。令和2年4月1日以降に適用。
【配偶者居住権】
配偶者居住権とは、配偶者が相続開始時に、被相続人が所有する建物に住んでいた場合、遺産分割または遺贈によって、その建物全部を無償で使用・収益することができる権利をいう。
配偶者居住権の期間は終身の間(または一定の期間)で、配偶者がその建物に居住しながら預貯金などを相続することが可能となり、老後の生活費を確保できるようになった。
またこの権利を登記することにより、第三者に対抗することもできる。譲渡はできない。
【配偶者短期居住権】
配偶者短期居住権とは、配偶者が相続開始時に、被相続人が所有する建物に無償で住んでいた場合、一定期間、その建物の使用していた部分を無償で使用することができる権利をいう。
ただし建物の全部ではないし、収益することもできない。遺産分割または遺贈がなくても、相続開始により当然に発生する権利である。
一定期間とは、遺産分割により建物の帰属が確定した日または相続開始時から6か月を経過する日のうち、いずれか遅い方をさす。
これにより配偶者は、直ちに生活の基盤を失う危険を回避することができるようになった。なお、この権利は登記できず、譲渡もできない。
──配偶者居住権
第1028条 ①被相続人の配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に( a )していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物の( b )について無償で( c )をする権利を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と( d )していた場合にあっては、この限りではない。
1 ( e )によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
2 配偶者居住権が( f )の目的とされたとき。
②居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその( g )を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない。
❶相続開始の時に、被相続人の財産に属した建物に居住していた配偶者は、遺産分割や遺贈により、終身の間その居住建物の全部について無償で使用および収益をすることができる。◯か✕か?
❷配偶者居住権は、登記をすることも、譲渡することもできない。◯か✕か?
──配偶者短期居住権
第1037条 ①配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に( h )していた場合には、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める日までの間、その居住していた建物の所有権を相続又は遺贈により取得した者に対し、居住建物について無償で( i )する権利を有する。ただし、配偶者が、相続開始の時において居住建物に係る( j )を取得したとき、又は第891条の規定に該当し若しくは( k )によってその相続権を失ったときは、この限りでない。
1 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で( l )をすべき場合→遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から( m )を経過する日のいずれか遅い日
2 前号に掲げる場合以外の場合→第3項の申入れの日から( n )を経過する日
②前項本文の場合においては、居住建物取得者は、第三者に対する居住建物の( o )その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨げてはならない。
③居住建物取得者は、第1項第1号に掲げる場合を除くほか、いつでも配偶者短期居住権の( p )をすることができる。
❸相続開始の時に、被相続人の財産に属した建物に無償で居住していた配偶者は、一定の期間、その居住建物の全部について無償で使用をすることができる。◯か✕か?
❹配偶者短期居住権は、遺産分割または遺贈によって取得できる。◯か✕か?
❺配偶者短期居住権は、登記をすることも、譲渡することもできない。◯か✕か?
❻配偶者は、遺産分割により居住建物の帰属が確定した日または相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日までの間、もしくは居住建物取得者が配偶者短期居住権の消滅の申入れをした日から6か月を経過する日までの間、無償で使用および収益をすることができる。◯か✕か?
──遺留分侵害額の請求
第1046条 ①遺留分権利者及びその( q )は、受遺者又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する( r )を請求することができる。
❼遺留分侵害額請求権は単なる金銭債権なので、これによる権利の移転はない。◯か✕か?
❽遺留分権利者は、特定財産承継遺言により財産を承継した相続人に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。◯か✕か?
❾兄弟姉妹に遺留分はない。◯か✕か?
【条文穴埋めの答】a 居住、b 全部、c 使用及び収益、d 共有、e 遺産の分割、f 遺贈、g 共有持分、h 無償で居住、i 使用、j 配偶者居住権、k 廃除、l 遺産の分割、m 6箇月、n 6箇月、o 譲渡、p 消滅の申入れ、q 承継人、r 金銭の支払
【一問一答の答】❶◯ ❷✕(登記はできる) ❸✕(全部ではない) ❹✕(当然に取得する) ❺◯ ❻✕(収益はできない) ❼◯ ❽◯ ❾◯