──はじめに
分野別過去問の最高峰、LECの『ウォーク問』❶~❸の使い方について、少し掘り下げて解説してみた。ここで取り上げたのは、❷の業法2つに、❸の法令1つの合計3つである。
Twitterをやっていると、DMにいろいろな質問が寄せられてくる。一問一答の使い方からお悩み相談まで、それこそピンキリである。
8月に入ってからは、その『ウォーク問』の使い方についてアドバイスを求める人が増えてきた。
以前にも、「ウォーク問を分析する」というタイトルでブログ記事を上げたことがあるが、今回は、もっとダイレクトに「使い方」について触れてある。
使い方も人によってピンキリだと思うが、ここでは私自身の使い方を解説してみることにした。こんな感じで使用すれば、『ウォーク問』をマスターすることも可能だという一例だ。
ご参考にしていただければ幸いである。
──営業保証金【業法~問55】特A
宅地建物取引業者A社の営業保証金に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、正しいものはどれか。
❶ A社が地方債証券を営業保証金に充てる場合、その価額は額面金額の100分の90である。
❷ A社は、営業保証金を本店及び支店ごとにそれぞれ最寄りの供託所に供託しなければならない。
❸ A社が本店のほかに5つの支店を設置して宅地建物取引業を営もうとする場合、供託すべき営業保証金の合計額は210万円である。
❹ A社は、自ら所有する宅地を売却するに当たっては、当該売却に係る売買契約が成立するまでの間に、その買主(宅地建物取引業者ではないものとする)に対して、供託している営業保証金の額を説明しなければならない。
(本試験 2012年 問33 改題)
【答えと解説】
❶ 営業保証金を有価証券で供託する場合の評価額は、次のように決められている。
国債証券:100分の100
地方債・政府保証債証券:100分の90
その他の有価証券:100分の80
地方債証券の評価額は、上記のように額面金額の「100分の90」である。よって、これが正解肢となる。→『とらの巻』p223参照
❷ 過去問学習では、❶が正解でも、❷~❹もしっかり分析しなければならない。
営業保証金の額は、次のように定められている。
主たる事務所(本店):1,000万円
その他の事務所(支店):500万円
そして、これらを「まとめて」主たる事務所の最寄りの供託所に供託する。営業保証金を本店及び支店ごとに、別々に供託するわけではない。よって、本肢は誤りとなる。→『とらの巻』p221、p223参照
❸ 上記❷にあるように、本店が1,000万円、支店が5つで500万円×5=2,500万円なので、供託すべき営業保証金の合計額は「3,500万円」である。よって、本肢も誤りとなる。
ちなみに、保証協会の弁済業務保証金分担金の納付額は、以下のとおりである。
主たる事務所(本店):60万円
その他の事務所(支店):30万円
こちらならば、合計額は「210万円」である。営業保証金と弁済業務保証金分担金の区別が、受験生にしっかりできているかどうかを試した問題といえる。→『とらの巻』p223、p230参照
❹ 保証協会に加入していない宅地建物取引業者は、営業保証金を供託しなければならない。
そして取引の相手方(買主)に対して、営業保証金を供託している「供託所とその所在地」を説明しなければならないが、営業保証金の額まで説明する必要はない。よって本肢も誤りとなる。→『とらの巻』p224参照
▶営業保証金と保証協会
https://www.paparing-takkenshi.com/entry/2020/04/07/182943
──媒介・代理契約【業法~問81】特A
宅地建物取引業者A社が、Bから自己所有の甲宅地の売却の媒介を依頼され、Bと媒介契約を締結した場合における次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、正しいものはいくつあるか。
ア A社が、Bとの間に専任媒介契約を締結し、甲宅地の売買契約を成立させたときは、A社は、遅滞なく、登録番号、取引価格、売買契約の成立した年月日、売主及び買主の氏名を指定流通機構に通知しなければならない。
イ A社は、Bとの間に媒介契約を締結し、Bに対して甲宅地を売買すべき価格又はその評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない。
ウ A社がB社との間に締結した専任媒介契約の有効期間は、Bからの申出により更新することができるが、更新の時から3月を超えることができない。
❶ 一つ
❷ 二つ
❸ 三つ
❹ なし
(本試験 2013年 問28 出題)
【答えと解説】
個数問題である。近年、個数問題は増加傾向にあり、苦手にしている受験生は多い。故に、得意にしておけば、他の受験生と差が付きやすい。
ア 指定流通機構に登録した宅建業者は、登録に係る契約が成立したときは、以下の3つの事項を、遅滞なく指定流通機構に通知しなければならない。
①登録番号
②物件の取引価格
③契約の成立年月日
これらの中に「売主及び買主の氏名」は含まれていないため、アは誤りの肢となる。→『とらの巻』p243参照
イ 宅建業法の34条の2第2項に、「宅建業者は、宅地又は建物を売買すべき価格又はその評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない」とある。よって、イの肢は正しい。→『とらの巻』p242参照
ウ 専任媒介契約又は専属専任媒介契約の有効期限は、更新の時から3ヶ月以内である。ただし、「依頼者からの申出」がなければ更新できない。よって、ウの肢も正しい。→『とらの巻』p239参照
従って、イとウの2つが正解肢ということになり、答えは❷となる。
▶3つの媒介契約
https://www.paparing-takkenshi.com/entry/2020/04/10/185443
──農地法【法令~問90】特A
農地法(以下この問において「法」という。)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
❶ 相続により農地を取得する場合は、法第3条第1項の許可を要しないが、遺産の分割により農地を取得する場合は、同項の許可を受ける必要がある。
❷ 競売により市街化調整区域内にある農地を取得する場合は、法第3条第1項又は第5条第1項の許可を受ける必要はない。
❸ 農業者が、自らの養畜の事業のための畜舎を建設する目的で、市街化調整区域内にある150㎡の農地を購入する場合は、第5条第1項の許可を受ける必要がある。
❹市街化区域内にある農地を取得して住宅を建設する場合は、工事完了後遅滞なく農業委員会に届け出れば、法第5条第1項の許可を受ける必要はない。
(本試験 2011年 問22 出題)
【答えと解説】
❶ 相続又は遺産分割で農地を取得する場合、農地法第3条第1項の許可(農業委員会の許可)を受ける必要はない。ただし、農業委員会への届出は必要である。よって、本肢は誤りとなる。→『とらの巻』p405参照
❷ 競売により農地を取得する場合、農地法第3条第1項または農地法第5条第1項の許可が必要である。競売による取得であっても、権利の移動となることには違いないからだ。よって誤り。
農地法3条:権利の移動
農地法4条:転用
農地法5条:権利の移動+転用
なお、競売による取得は『とらの巻』には載っていないため、ここでこのまま覚えること。
❸ 農地法第5条第1項に、「農地を農地以外のものに転用するために取得する場合、原則として、農地法第5条の許可を受けなければならない」とある。よって、これが正解肢となる。
この論点は、『とらの巻』p404の図を見れば、これに近いことが載っている。しかし完全に一致するわけではないので、少し戸惑うかも知れない。
それより、市街化区域内にある150㎡の農地がくせ者で、150㎡は2アール未満である。2アール未満の農地の転用は許可不要と記憶している人は、それをもって❸を✕としてしまう可能性がある。
だが「2アール未満の農地の転用」は、4条許可が不要なのであって、ここで必要となるのは5条許可である。引っかけ問題の一つだが、約3人に1人がこの問題を落としているので注意が必要だ。
❹ これも上記❸と同じで、農地を農地以外の土地に転用するために権利を取得する場合、原則として、農地法第5条の許可を受けなければならない。
ただし、市街化区域内の農地の場合、あらかじめ農業委員会に届け出れば許可不要となる。工事完了後に届け出てもダメだ。「あらかじめ」だから、工事に着手する前に届け出なければならない。よって、本肢も誤りとなる。→『とらの巻』p405参照
▶農地法を捌く
https://www.paparing-takkenshi.com/entry/2020/04/20/193544