宅建・史上初の小学生合格者の父による宅建合格ブログ

史上初の小学生合格者(当時12歳/小6)の父による宅建合格ブログです。これから宅建試験にチャレンジする方々に、最短距離で合格を勝ち取るためのノウハウを提供します。勝利の方程式&95%理論の提唱者!!

統計データのまとめ(2021)【免除】

──はじめに

宅建試験の5問免除の一つに「統計」があり、問いの48がそれに当たる。

ここ10年間の出題項目と出題数を見ると、

地価公示(9回)
建築着工統計(11回)
土地白書(10回)
法人企業統計(9回)
国土交通白書(4回)

と概ね5つに集約される。

仮に、これら5つの項目以外から出題されたとしても、それは肢の一つとしての出題であり、消去法で十分対処できる。

また統計では、「上昇か下落か」「増加か減少か」又は「何年連続か」あたりが重要であって、細かなパーセンテージ(%)まで記憶する必要はない。

そのことを知らないが為に、数字に翻弄されて統計自体を諦めてしまう受験生が多いのが残念だ。

これらの「統計データ」は、通常のテキストには掲載されておらず、予備校や通信を利用していない独学の受験生には大いに参考になるはずである。

特に、赤文字の部分をしっかり押さえれば1点ゲットできるだろう。

──地価公示(令和3年3月公表)

ここでいう地価とは、土地の価格のこと。これが前年に比べて何%上昇しただの下落しただのを公示したものが「地価公示」である。

令和2年の1年間の地価変動は次のとおり。

【全国平均】

全国平均の地価変動率は6年ぶりに下落に転じ、用途別では、

〈住宅地〉5年ぶりに下落
〈商業地〉7年ぶりに下落
〈工業地〉5年連続の上昇(上昇率は縮小)

となっている。

【三大都市平均】

三大都市平均の地価変動率は8年ぶりに下落に転じ、用途別では、

〈住宅地〉8年ぶりに下落
〈商業地〉8年ぶりに下落
〈工業地〉7年連続の上昇(上昇率は縮小)

となっている。

【地方圏平均】

地方圏平均の用途別の地価変動率は、

〈住宅地〉3年ぶりに下落
〈商業地〉4年ぶりに下落
〈工業地〉4年連続の上昇(上昇率は縮小)

となっている。

──建築着工統計(令和3年1月公表)

建築着工統計には、年統計(1~12月)と年度統計(4~翌年3月)の2種類があるが、直近10年は「年統計」からしか出題されていないので、年統計だけを視野に入れておけばよい。

【新設住宅着工戸数】

令和2年の新設住宅着工戸数は、約81.53万戸で、4年連続の減少となった。利用関係別戸数の内訳は、

〈持家〉昨年の増加から再び減少
〈貸家〉3年連続の減少
〈分譲住宅〉6年ぶりの減少(マンションは昨年の増加から再び減少、一戸建ては5年ぶりの減少)

となっている。

【新設住宅着工床面積】

約6,645万㎡、4年連続の減少となった。

──土地白書(令和3年6月公表)

令和2年の全国の「土地取引件数」(売買による土地の所有権移転登記の件数)は、全国で約128万件で、ほぼ横ばいで推移している。

日本の「国土面積」は約3,780万haで、森林が約2,503万ha、農地が約440万ha、住宅地や工業用地等の宅地は約197万haである(森林と農地で国土面積の約8割を占める)。

──法人企業統計(令和2年10月公表)

令和元年度の不動産業の「売上高」は、約45兆3,835億円で、全産業の売上高の約3.0%を占めているが、5年ぶりに減少した。

同年度の不動産業の「経常利益」は、約4兆6,117億円で、2年連続の減少となった。

同年度の不動産業の「売上高経常利益率」は10.2%で、2年連続の減少となった。

──国土交通白書(最新のデータより)

令和3年3月末現在の宅地建物取引業者数は、127,215業者で、7年連続の増加である。

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統計データのまとめ(2021)【免除】|パパリン宅建士
#note 「穴埋め問題」あります↓
https://note.com/paparingtakken/n/nfbfcf9cd80d0

LECの直前予想模試(2021)

──模試には当たり外れがある

毎年6月になると、店頭に「宅建予想模試」が出揃いはじめる。種類はそれほど多くはないが、出来不出来の差は大きい。

「市販の模試なんてどれも同じ」

「どれをやっても大差はない」

そういう意見もある。

だが私が実際に解いてみて感じたことは、

「市販の模試には当たり外れがある」

ということだ。

資格学校で作られた模試は総じて出来がよく、ある程度信頼もできるが、それ以外の模試に本試験とはかけ離れたものが一部存在するので注意しなければならない。

宅建試験の過去問の焼き直し率は、概ね6~8割で、平均すると7割ほど。資格学校の模試も、これに則って作成されている。

ところが一部の模試に、この法則を無視して作られているものがあるのだ。

今年は分からないが、数年前までの住宅新報出版の『パーフェクト宅建の直前予想模試』や成美堂の『法改正と完全予想模試』は特にひどかったと思う。

「こんなの本試験には出ないだろう」

といった奇をてらった問題ばかりで、焼き直し率は明らかに5割を下回っていた。

こんな本試験とかけ離れた模試を、直前期に解いた受験生はたまったものではない。

私も当時、本試験の直前に『パーフェクト宅建の直前予想模試』を解いてみたが、50問中で17問しか正解できず、頭の中が真っ白になったのを覚えている。

一瞬とはいえ、本試験を辞退しようかと思ってしまったほどだ。

私以外にも、本試験直前にこの類いの市販模試に手を付けてしまったばかりに、自信をなくして本試験そのものから撤退してしまった受験生も一人や二人ではないだろう。

私や息子の健斗が、実際にいくつかの市販模試を解いてみた結果、及第点をあげられそうなのはLECTAC日建の3社だけである。

これら3社の「直前予想模試」は、どれも難易度が本試験に近く、他社の市販模試に比べて問題の質も良いと感じた。

──No.1の市販模試はこれだ

そして、その3社の中から、あえてNo.1模試を選ぶとしたら、LECの模試にとどめを刺す。

LEC模試の最大の長所は、やはり問題の質の高さである。法改正も行き届いていて、統計問題の的中率も高い。

統計は、昨年も一昨年も的中していた。

日本でも指折りの法律系の資格学校ゆえ、その蓄積されたノウハウが『直前予想模試』にも反映されているのだろう。

通常の市販模試は、概ね3回分しか載っていないが、LECは4回分ある。これも大きい。

またLECは、ゼロ円模試やファイナル模試のような「オープン模試」も主催しているが、それらと比べても、この『直前予想模試』は遜色がない。

それほど質が高く、出来がいいのだ。

その模試が、4回分、わずか1,760円で購入できるのである。これを本試験前にやるとやらないとでは、最大で3点ほどの開きが出ると私は思っている。

仮に、過去問しかやらずに本試験に挑んだ場合、新規の問題に戸惑う可能性が高い。

毎年、焼き直しではない新規の問題が10~20題ほど出題されるが、そういう問題に面食らってパニックを起こし、他の易しい問題を落としてしまうリスクがある。

だから私は、昨年、一昨年と

「合格したければ予想模試を解きなさい」

と訴えてきたのだ。

このLECの『直前予想模試』を本試験前に4回分解くことで、法改正対策にもなるし、統計対策にもなる。

1+1が、3にも4にもなるのである。

一部の受験生の間で

「本試験とは若干傾向が異なる」

という指摘もあるが、それでは本試験問題と難易度だけではなく、傾向まで似せた模試が一体どこにあるのだろうか?

私的にはLECの市販模試がNo.1であることに揺るぎないが、相性はあると思うので、TACや日建の市販模試で代用しても構わない。

ただし、TACの2021年版に関しては「難しすぎる」という意見があることは付け加えておきたい。

毎年、1点差で不合格になる受験生が何千人もいるのが宅建試験である。

今年、本気で合格を目指している受験生は、これら3点の『直前予想模試』の中から少なくとも1冊は購入してほしい。

そして本試験前までに、きちんと時間を計って解き、間違えた問題は解説を読んで理解し、確実に合格を掴みとってもらいたい。

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宅建士 2択でチェック!

──予期していなかった出来事

6月8日(火)に、宅建みやざき塾の宮嵜先生から、レターパックが我が家に届けられた。

これまでも郵送で何点かご恵贈していただいたが、すべて事前連絡があった後だったので、今回の突然の出来事には少し驚いた。

送られてきたものは、宮嵜先生の新刊本のほか、宅建みやざき塾で使用する合格テキストや基本を学ぶQ&Aなど複数である。

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宮嵜先生にお礼の気持ちを伝えると、「宅建受験生のみなさまへのアドバイスにお役立ていただけましたら幸いです」という丁寧な返信までしていただいた。

今回それらの中から、宮嵜先生の新刊本、宅建みやざき塾の『宅建士 2択でチェック!』(中央経済社)を取り上げてみたいと思う。

──2択でチェック!の概要①

宅建受験生の間では、すでにTwitterなどで話題になっている本ではあるが、発売日より少し前に届けていただいたことになる。

最初のページを開くと、宮嵜先生の直筆サインが黒の油性ペンで記されていた。

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宮嵜先生の宅建受験生に対する思いがストレートに伝わってくるサインだった。

さらにページを開いてみる。

本書の使い方として、「10時間(1テーマ10分前後×60テーマ)で大逆転!」いうタイトルと共に、こんな人におすすめとして3つの例が挙げられていた。

2021年は絶対合格したいリベンジ受験生
過去問を解いているのに模試の点数が悪い
最近の高水準を受け、高得点で合格したい

なるほど納得のできるものばかりだ。また受験生の学力レベルに合わせて、

昨年の本試験や模試で20点~30点の方
昨年の本試験や模試で30点~合格ボーダーラインの方

の2つのグループに分け、それぞれの勉強の進め方が大まかに述べられている。

本書は60テーマ(章)で成り立っているが、各テーマに2択問題が1つというわけではなく、複数問の場合もある(合計で100問ほど)。

分野ごとのテーマ数は次のとおり。

権利関係 20テーマ
法令上の制限 10テーマ
税・価格評定 8テーマ
宅建業法 17テーマ
5問免除 5テーマ

ここまでが序章、ここから先が本題となる。

──2択でチェック!の概要②

初めに目についたのは、各テーマごとに、それに対応する宮嵜先生のYouTube解説動画のQRコードが貼り付けてあることだ。

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部分的にではなく、すべての章で、それに関連する宮嵜先生のYouTube動画が見られるのである。このアイディアは素晴らしいし、ある意味画期的なことではないだろうか?

また印の数で、その章の重要度が分かるようになっている。★★★★☆なら、重要度が4ということ。宅建受験生なら、最低でも重要度3以上はマスターしてほしいところである。

私自身、この本の2択問題をいくつか解いてみたが、正直、簡単ではなかった。

受験生が「最後の2択」で迷ったとき、そこから正解を導き出すためのトレーニングとしての教材なのだから、簡単なはずがない。

私にはむしろ、4択問題より難しく感じた。

例えば、次の民法の意思表示の2択問題を解いてみてほしい。

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どうだろうか。通常の4択問題より難しく感じたのではないだろうか?

ただ漠然とテキストを読み、過去問を解いているだけの受験生には難しかったはずだ。

この問いの答は「1」だが、しっかりと条文レベルで内容を抑えておかないと、4択の合格者正解率が80%(LEC基準)のこの問題でも、足をすくわれてしまうという一例である。

なお、各2択問題のすぐ下に、「ココが分かれ目!」と称して、問題を解く上での着眼点が簡単にまとめられている。

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この着眼点に気付けるかどうかが勝負の分かれ目で、その洞察力を高め、鍛えることを目的とした教材ともいえる。

また本書には、すべての2択問題に詳しい解説が付けられている点も特筆すべきだろう。

──2択でチェック!の概要③

各テーマの解説が詳しいことも利点だが、イラストや図、表などが、より頭の中をクリアにする役割を果たしてくれる。

例えばこんなふうに、、

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農地法の3条、4条、5条の流れを図にしたものだが、この図があるだけで理解がはかどり、視覚の面からも記憶に残りやすい。

もう一つ挙げておく。

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保証協会の「還付の流れ」を図で表したものである。この還付の流れは、こうやって図にしないとなかなか頭に残らない。

宮嵜先生の『宅建士 2択でチェック!』には、このようなイラストや図が随所に差し込まれていて、記憶の助けになっている。

宅建みやざき塾の合格テキスト3冊にも、このようなイラストや図、表がふんだんに使用されているが、本書もそれに倣っている。

つまり、みやざき塾の合格テキストのいいとこ取りがされているというわけだ。

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こういった3つの媒介契約のまとめの表なども、イラストや図と並んで、記憶の手助けになっている。こういう表も本書には多い。

ただ単に、解説が詳しいだけの教材は多いが、イラストや図、表などをふんだんに取り入れた教材の方が圧倒的に記憶に残る。

それだけではない。イラストや図、表を差し込むことで、活字を減らすこともできる。活字が減れば、勉強時間だって短縮できるのだ。一石二鳥、いや一石三鳥である。

──総括とまとめ

本書を使用する時期は、ある程度、過去問学習が終わった後がベストかも知れない。

とはいえ初学者の方が、本格的に4択過去問に入る前に、2択で慣らしておくのも一つの方法ではないだろうか?

メイン教材としてではなく、合格ラインの一歩手前まではいくのだが、その先の壁がなかなか越えられない受験生のための「サブ教材」といった位置付けの本だと思う。

毎年、1点や2点に泣く受験生が多いのが宅建試験である。

もがき苦しんでも越えられなかった壁。その壁を越えるためのツール。そういうコンセプトで作られた教材なのだろう。

壁を乗り越えるための着眼点なり情報が、この教材には散りばめられている。もちろん、合格点はクリアできるが、さらに上を目指したい受験生にも本書は有効だ。

宅建受験生を合格に導くため、長年にわたって尽力されてきた宮嵜先生の渾身の一冊

本書をマスターすれば、最低でも今より2~3点、うまくいけば5点以上の点数の上乗せが期待できる。これを使わない手はない。

すべての宅建受験生、とりわけ30~35点あたりから抜け出せずにいる初学者あるいはリベンジ組にお薦めしたい良書である。

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初学者を悩ます2つのギャップ®

──第一のギャップ

勉強法の流れはざっと次のようなもの。

①テキスト⇄②一問一答(過去問)→③分野別過去問→④模試→⑤本試験

中でも重要なものは②と③である。

初学者ならば、当然のことながら、まず①のテキストから入った方がよい。そして小分けした項目ごとに①と②を行き来する。

しかし多くの受験生は、ここでつまずく。テキストを読んでも、一問一答(過去問)が解けないことがあるのだ。

単にテキストに、過去問の論点が載っているか載っていないかだけの問題ではない。

テキストというのは、初学者でも理解できるように、内容をかみ砕いて説明しているものが多い。ところが過去問はそうではない。

Twitterなどで、

「テキストを読んでも過去問が解けない」

という声をよく目にするが、そういうこと。テキストと過去問の間にはギャップがある。

言い回しの違いというか、テキストは初学者でも読みやすくするために手を加えることが可能だが、過去問はそうはいかない。

私はこれを、かつて『らくらく宅建塾』(宅建学院)を読んだ後に実感した。

このテキストは文章が砕けていて取っ付きやすい反面、姉妹品の『過去問宅建塾』を解こうとすると大抵の人は面食らう。

過去問が恐ろしく難しく感じるのだ。

これが初学者の方々が出くわす最初の試練、最初のギャップ(第一のギャップ)である。

解決策としては、これはもう過去問の言い回しに慣れるしかないと思う。

──第二のギャップ

最初のギャップを何とか乗り越え、過去問学習が軌道に乗ってきた頃に、受験生の多くは模試を受けるようになる。

模試には、資格スクールで受ける本格的なものから、書店で購入できる市販模試までいろいろあるが、予備校主催の「オープン模試」を一度は受けておくことをお勧めする。

オープン模試とは、資格スクールの塾生でなくても受けられる模試のこと。誰でも受けられる模試だからオープン模試というのだ。

7月中旬にLEC主催の「ゼロ円模試」が行われるので、多くの受験生にお勧めしたい。

過去問を何度も繰り返し、正解率が8割に乗ってきたとしよう。年度別でいえば40点だ。

通常、宅建試験は7割を超える得点があれば合格できる。昨年は10月試験が38点、12月試験が36点だった。でもこれは高い方だ。

直近10年の合格点の平均は、34.6点である。

過去問で40点に届いていれば、どの年の合格ラインよりも高く、合格は間違いない、、

そう思うだろうか?

試験には「焼き直し率」というものがある。特に宅建試験はこの焼き直し率が高く、過去問学習を避けて通れない理由でもある。

焼き直し率について考察する®️
https://paparing-takkenshi.com/entry/2020/02/15/115205

ここ数年、宅建の焼き直し率は8割に届くこともあったが、平均すると7割ほどだ。

オープン模試はもとより、市販模試の多くはそのへんも考えて作られている。焼き直し問題が7割、初出の問題3割という具合に、、

焼き直し問題は、過去問をマスターしていれば普通に解けるもの。初出の問題は、ほとんどの受験生が目にしたことのない論点なので、正解率も50%に満たないことが多い。

先述したように、過去問の正解率が8割だったとしよう。その人がそのまま模試を受けた場合、40点に届くことはまずない。

焼き直し率7割の計算式はこうだ。

50×0.8×0.7+α=28+α

初出の問題が3/15正解なら、

28+3=31点

初出の問題で6/15正解したとしても、

28+6=34点

にしかならない。

つまり過去問40点の人が模試を受けると、

28+α=31~34点

しか得点できない計算だ。これこそが第二のギャップ、すなわち「模試の洗礼」である。

計算上は、過去問の点数より6~9点のマイナスだが、人によっては10点以上のマイナスになることも十分にありうる。

また仮に過去問が48点だった場合、

50×0.96×0.7+α=33.6+α

となり、

33.6+α=36.6~39.6点

と昨年の合格ライン付近に到達できる。

あとは学習の精度を高め、周辺知識を押さえれば40点オーバーが現実味を帯びてくる。

周辺知識について
https://paparing-takkenshi.com/entry/2021/04/16/190857

実際、40点を超えて合格する受験生は、このレベルにまで到達しているもの。

宅建試験の合格率が、15~17%程度しかないという現実を直視してほしい。

合格する人は、生半可な勉強で終わることはない。過去問のマスターは当然として、その上で自分に何が足りないのかを見極め、周辺知識もしっかり押さえてくる。

そういう志の高い受験生が、宅建試験の合格圏内にひしめいているのだ。

「過去問を95%以上正解するなんてムリ」

「合格点ギリギリを狙えばよい」

そういうメンタルの持ち主だと、宅建合格は厳しいと言わざるをえない。

不動産キャンプ
https://ioecu5ft.autosns.app/a/cmZLjPNo7h/tVtz


どこでも宅建士 とらの巻(2021)

──その最大のメリットは?

5月24日(月)に、LECの『どこでも宅建士 とらの巻』の最新版が発売された。

メジャーなテキストとしては、2021年4月1日に施行されている法律に完全対応した唯一の参考書ではないだろうか?

同じLECには、3分冊の『合格テキスト』もあるが、こちらは最新の法改正には未対応で、しかも3冊合わせて1,200ページを超える。

通読用というより、『パーフェクト宅建士 基本書』(住宅新報出版)と同じで、どちらかというと調べるためのテキストといった感じ。

その点『とらの巻』は、『合格テキスト』の半分にも満たない500ページほどしかなく、通読用としても調べ用としても使える。

それでいて合格に必要な情報量にも不足することなく、40点以上を狙える教材だ。

また『とらの巻』は、同じLECの『ウォーク問』全3冊とリンクしていて、ウォーク問の問題番号と肢番号も記載されている(下段)。

これは相互を照らし合わせて勉強するのに大変便利だし、時間の節約にもなる。

それゆえ『とらの巻』を購入するのなら、同時に『ウォーク問』❶~❸も購入した方が良いし、その方が効率的なのは間違いない。

私はこの4冊はセットと捉えている。

──2021年度の法改正

昨年は民法大改正の影響で、権利関係のみならず、宅建業法にも法改正が反映された。

もちろん今年度もその影響から逃れることはできないが、それとは別に、2021年度から施行されている新たな法改正にも目を向けなければならない。

都市計画の決定手続きの一部や所得税の住宅ローン控除、贈与税、登録免許税にも法改正があったが、次に掲げる重要事項説明の2つの法改正については必ず押さえてほしい。

【IT重説】

一定の条件のもと、宅地や建物の賃貸借に限ってテレビ会議などのITを活用する「IT重説」が行われてきたが、2021年3月30日より売買・交換でもそれが可能となった。

ただし相手方に対し、あらかじめ取引士が記名押印した重要事項説明書(+添付書類)を送付しておかなければならない。

【水害ハザードマップ】

市町村の長が提供する「水害ハザードマップ」に対象となる宅地・建物の位置が表示されているときは、当該宅地・建物の所在地を重要事項として説明しなければならない。

売買・交換だけではなく、宅地や建物の貸借でも重要事項説明は必要とされる。

──その他の特徴は?

息子の健斗が合格した年の翌年(2015年)から、とらの巻には「とらの子」と称した30ページほどの小冊子が付属するようになった。

これがなにげに役に立つのだ。

簡易なまとめ本だが、薄いので本試験当日に会場へ持っていくのに便利である。

重要語句が淡い赤文字になっていて、赤シートで隠して覚えられる仕様だ(赤シートは付属していない)。

内容的には基本的なものばかりで、最終チェックとしても利用できるだろう。

価格も、他のメジャーな教材が3,000円前後するのに対し、この『とらの巻』は税込み2,420円と良心的である。この点も評価したい。

過去問に分野別の『ウォーク問』を選択した人には必須テキストだし、法改正が万全なので、他のテキストをお持ちの方も「サブテキスト」として手元にあると重宝する。

試験に出ない部分を大胆にカットするなど、内容を凝縮しているため初学者向けではないが、図や表が多くて文章も読みやすい。

箇条書きされた“とらの巻”(全部で232箇所ある)を、知識の抜け防止としてチェックするだけでも相当に力になるはずだ。

終盤の追い込み期は、『とらの巻』と『ウォーク問』の計4冊に絞って、勉強を加速させていくのがベストな方法だろう。

宅建の市販テキストは数多くあるが、4月までの法改正に完全対応したメジャーなテキストを求めるのなら『とらの巻』一択である。



時短合格術50から学ぶ

──はじめに

先日、LECの福島先生から、『司法書士試験 社会人の時短合格術50』(中央経済社)をご恵贈いただいた。

ご著書は“レターパック”で私の自宅に届けられ、その日のうちに拝読させてもらった。

今回、福島先生へのお礼の意味も込めて、ブログ記事にさせてもらった次第である。

先生のご著書は全8章で成り立っており、そのうちの第7章は、司法書士試験の「科目別の正しい対策法」に関するもの。第8章は「未来像がモチベーションを高める」と題して、司法書士の実務などについて触れられている。

この2つの章に関しては、司法書士受験生にとっては非常に有益だと思う。他の資格試験の受験生の方々には、その2つの章を除いた1~6章までに役立ちそうなものが多くお勧めだ。

ここではその1~6章の中から、宅建受験生に役立ちそうなものをピックアップしてみる。

──第1章、第2章より

最初に目を引いたのは、第1章の02「短期合格に犠牲はつきもの」というフレーズだ。

私の場合、職場の友人との付き合いを犠牲にしたといえるが、福島先生は、合格するためにお酒、スマホ、ゲーム、テレビなどを断つことの必要性を説いておられた。

その後の人生がかかっていると考えれば、ある程度の犠牲は仕方ないのだろう。

04の「どんな教材も3回以上やる」というのも一理ある。どんなテキストあるいは過去問でも、1周では絶対にモノにできないからだ。

私の場合は、テキストは2周して、その後は過去問を解きながら、どうしても分からないときに辞書的に活用する方法を勧めてきた。

06の「1番つらいのがインプット期」というのも共感できる。中・高の定期テストと違って、ここからここまでが範囲といった限定的なものではなく、1冊(場合によっては3冊)すべてが範囲なのだ。内容的にも難しい。

最初のインプット期が特にキツい。キツいが、乗り切らなければ合格はない。

07の「とにかく先に進もう」も、まったくその通りである。多少分からないところがあったとしても、その度に立ち止まっていたのでは、いつまで経っても最後まで進めない。

最初からすべてを理解しようなんて虫のいいことを考えてはいけない。余程の天才でもない限り、そんなことはまず不可能だ。

いくらか疑問点が残っていたとしても、案外2周目以降で理解できるようになるもの。最後のページまで辿り着かなければ、その2周目以降がどんどん先延ばしになってしまう。

09、10では、宅建士からのステップアップとしての、行政書士や司法書士について述べられている。ここまでが第1章である。

そして第2章では、私の意見と被るところとそうでないところがあって、対比しながら楽しく読ませていただいた。

第2章のタイトルは、「短期合格者だけが知っている真実」となっている。

その11「テキストだけでは合格できない」は、まさに私の言わんとすることと同じだ。

テキスト至上主義の弊害®️
https://paparing-takkenshi.com/entry/2020/01/19/000450

テキストの内容が頭に入っているはずなのに過去問が解けない。そりゃそうだろう。テキストより過去問の方が、文章としての言い回しがずっと難しいからだ。

問題慣れしておかないと、本試験では思ったように得点できない。過去問演習とは、そういった文章を、難度の高い言い回しを読んで理解するための訓練の場でもある。

この過程をスルーしていては合格を勝ち取ることはできない。これは本当だ。

もちろんテキストの通読は必要だが、テキストは早い段階で見切りをつけ、あとは過去問(最初は一問一答)を解いていく過程で、分からないところを調べるために用いる。

辞書のような使い方をするわけだ。

また福島先生は、テキストと問題集の割合は3対7くらいだという。私も2対8ないし3対7としているから、大体同じくらいである。

そして14の「勉強時間は量より質」は、タイトルを見る限り、私が過去にブログの中で述べてきたものとは真逆である。

量より質か、質より量か?®️
https://paparing-takkenshi.com/entry/2020/01/17/000619

私はどちらも大切だと思うし、最終的には量をこなした方が合格に近づけるという考えだが、短期合格という点にスポットライトを当てると質がより大切になるのは否めない。

第2章の最後は、16の「情報を一元化する」である。福島先生は、テキストに書き込みをして情報を集約することをお勧めしている。

私の場合は、過去問の解説部分の余白に書き込みをして情報の一元化を図っていた。

──第3章~第6章まで

まずは第3章の「択一の正しい対策法」から、18の「過去問をリズミカルに解く」について。

問題文のひっかけ部分に下線を引くことや、解説部分の重要フレーズに意味などを追加することの重要性について述べられている。

そして立ち止まらずに、テンポよくリズミカルに問題を解くことを推奨している。

過去問をできるだけたくさん解き、ひっかけポイントを知ること、出題者の気持ちを理解できるようになることが大切であるという。

また第4章の24では、「模試でアドリブ力を養う」のタイトル通り、模試を受けることの意味が述べられている。時間配分の大切さ、初見の問題への対応力なども記載されている。

第5章は、「スランプを乗り越える」と題して、やる気が出ない時にどうするか、などのメンタル面に焦点を当てたものだ。

これについては、私も過去にブログ記事を残してあるので見比べてみてほしい。

やる気のない日の対処法®️
https://paparing-takkenshi.com/entry/2020/03/05/200354

さらに福島先生は、テキストがなくてもできるシャドートレーニングや、座ると眠くなる人のために「立ち勉」なるものを紹介している。

眠くて我慢できない時は、5分だけ寝ることやアイマスクの効用についても述べている。

ちなみに、ご著書と一緒にレターパックの中に花王のアイマスクも同封されており、福島先生の心遣いを感じることができた。

第6章は、「試験でベストを尽くすには」と題して、本試験前日のスケジュール表や当日の持ち物・心構えなどが綴られている。

32は、「前日は合否を分けない」のタイトル通り、前日の勉強は合否に影響を与えず、合否を分けるのは日常の勉強であるという。

ごもっともな意見だ。

前日は緊張して眠れないのが普通で、たとえ眠れなくても、目をつぶって寝転がっているだけでも案外休めている点も指摘している。

そして本試験当日は、公共交通機関に予期せぬダイヤの乱れがあることも想定し、早めに会場入りすることを促している。

ここまでが1~6章の概要といったところだ。

基本的には司法書士受験生をターゲットにした勉強本であるが、1~6章に限り、他資格の受験生にも役立つ本だと思う。

宅建受験生にもお勧めしたい良書である。

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3資格でみる法定地上権

──法定地上権とは何か?

以前に「抵当権のまとめ」の中で法定地上権について少し触れたが、今回はそれをもう少し掘り下げてみたいと思う。

そもそも法定地上権は、抵当権が実行され、競売により土地と建物の所有者が別々になった場合、建物が取り壊される社会経済上の不利益をなくすための法律である。

そうならないように、建物に「地上権」が当然に発生するように規定したのだ。

法定地上権については、民法に次のような条文がある。

第388条 土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。

なお、法定地上権が成立するためには、次の4つの要件すべてを満たさなければならない。

❶ 抵当権設定当時、土地の上に建物が存在すること
❷ 抵当権設定当時、土地と建物の所有者が同一人であること
❸ 土地・建物の一方または双方に抵当権が設定されること
❹ 抵当権が実行され、土地と建物の所有者が別々になること

これら4つの要件のうち、1つでも欠けていたら法定地上権は成立しない。

判例に紐付けて解かせる問題が多いが、この4つの要件を知っているだけで解ける問題も少なくない。必ず覚えておくように。

宅建試験、行政書士試験、司法書士試験の3つの法律系国家資格の過去問を用意しておいた。力試しに解いてみてほしい。


──宅建試験の法定地上権

【問題】~2018年〔問6〕やや難

Aが所有する甲土地上にBが乙建物を建築して所有権を登記していたところ、AがBから乙建物を買い取り、その後、Aが甲土地にCのために抵当権を設定し登記した。この場合の法定地上権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 Aが乙建物の登記をA名義に移転する前に甲土地に抵当権を設定登記していた場合、甲土地の抵当権が実行されたとしても、乙建物のために法定地上権は成立しない。

2 Aが乙建物を取り壊して更地にしてから甲土地に抵当権を設定登記し、その後にAが甲土地上に丙建物を建築していた場合、甲土地の抵当権が実行されたとしても、丙建物のために法定地上権は成立しない。

3 Aが甲土地に抵当権を設定登記するのと同時に乙建物にもCのために共同抵当権を設定登記した後、乙建物を取り壊して丙建物を建築し、丙建物にCのために抵当権を設定しないまま甲土地の抵当権が実行された場合、丙建物のために法定地上権は成立しない。

4 Aが甲土地に抵当権を設定登記した後、乙建物をDに譲渡した場合、甲土地の抵当権が実行されると、乙建物のために法定地上権が成立する。

【答】1

1 誤り A所有の甲土地に抵当権を設定した時、甲土地上にある乙建物はAの所有なので法定地上権は成立する。登記がA名義かどうかは関係ない。
2 正しい
3 正しい
4 正しい


──行政書士試験の法定地上権

【問題】~2011年〔問30〕難

法定地上権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

1 Aは、自己所有の土地(更地)に抵当権を設定した後に、その土地上に建物を建築したが、抵当権の被担保債権について弁済をすることができなかった。この場合において、抵当権者が抵当権を実行して土地を競売すると、この建物のために法定地上権は成立せず建物は収去されなければならなくなることから、抵当権者は、土地とその上の建物を一括して競売しなければならない。

2 AがBから土地を借りてその土地上に建物を所有している場合において、Bは、その土地上に甲抵当権を設定したが、Aから建物を取得した後に、さらにその土地に乙抵当権を設定した。その後、Bは、甲抵当権の被担保債権について弁済したので甲抵当権は消滅したが、乙抵当権の被担保債権については弁済できなかったので、乙抵当権が実行され、その土地は買受人Cが取得した。この場合、この建物のために法定地上権は成立しない。

3 AがBから土地を借りてその土地上に建物を所有している場合において、Aは、その建物上に甲抵当権を設定したが、Bから土地を取得した後に、さらにその建物に乙抵当権を設定した。その後、Aは、甲抵当権の被担保債権について弁済できなかったので、甲抵当権が実行され、その建物は買受人Cが取得した。この場合、この建物のために法定地上権は成立しない。

4 Aが自己所有の土地と建物に共同抵当権を設定した後、建物が滅失したため、新たに建物を再築した場合において、Aが抵当権の被担保債権について弁済することができなかったので、土地についての抵当権が実行され、その土地は買受人Bが取得した。この場合、再築の時点での土地の抵当権が再築建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたなどの特段の事由のない限り、再築建物のために法定地上権は成立しない。

5 AとBが建物を共同で所有し、Aがその建物の敷地を単独で所有している場合において、Aがその土地上に抵当権を設定したが、抵当権の被担保債権について弁済できなかったので、その抵当権が実行され、その土地は買受人Cが取得した。この場合、この建物のために法定地上権は成立しない。

【答】4

1 妥当でない 抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができ(389条1項)、土地と建物を一括して競売しなければならないわけではない(一括競売は義務ではなく任意)。
2 妥当でない 1番抵当権が消滅した後、2番抵当権が実行されて土地と建物の所有者が別々になった場合、2番抵当権設定時に土地と建物が同一人に属しているなど要件を満たしていれば法定地上権は成立する(土地に抵当権が設定されたケース)。
3 妥当でない 土地と建物が、1番抵当権設定時に同一人に属していなくても、2番抵当権設定時に同一人に属していれば、抵当権の実行により法定地上権が成立する(建物に抵当権が設定されたケース)。
4 妥当
5 妥当でない 土地が共有であれば法定地上権は成立しないが、建物が共有の場合、抵当権が実行されると法定地上権が成立する。


──司法書士試験の法定地上権

【問題】~2017年〔問13〕やや難

法定地上権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

ア 土地に抵当権が設定された当時、その土地の上に抵当権設定者の所有する建物が既に存在していた場合において、その建物について所有権の保存の登記がされていなかったときは、法定地上権は成立しない。

イ 同一の所有者に属する土地及びその土地の上に存在する建物が同時に抵当権の目的となった場合において、一般債権者の申立てによる強制競売がされた結果、土地と建物の所有者を異にするに至ったときは、法定地上権は成立しない。

ウ 法定地上権の地代は、当事者の請求により裁判所が定めなければならないものではなく、当事者間の合意で定めることもできる。

エ 建物の競売によって建物の所有権及び法定地上権を取得した者は、その建物の登記を備えていれば、その後にその土地を譲り受けた者に対し、法定地上権の取得を対抗することができる。

オ 法定地上権の成立後にその土地上の建物が滅失した場合には、その建物の滅失と同時に法定地上権も消滅する。

1 アイ 2 アオ 3 イウ 4 ウエ 5 エオ

【答】4

ア 誤り 抵当権設定当時、その土地上に抵当権設定者の建物は存在していたが、建物の所有権の保存登記がなされていなかった場合でも、法定地上権の成立は認められる。
イ 誤り 土地と建物の双方に抵当権が設定され、実行された結果、それぞれが別々に買い受けられた場合でも法定地上権は成立する。
ウ 正しい
エ 正しい
オ 誤り 土地の上に抵当権が設定された当時に建物が存在すれば、その建物が取り壊され再築された場合でも、再築された建物のために法定地上権が成立する。

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テキストと過去問®

──とある受験生のエピソード

某有名弁護士の先生が、まだ司法試験受験生だった頃の話、、

短答試験はすんなり受かっているものの、論文試験に打ちのめされていた彼が、何故だか宅建試験を受けることになった。

バブルの全盛期で、不動産業が大躍進を遂げていたこともあるのだろう。

願書の提出は済ませていたものの、司法試験受験生なのだからそちらが優先。気持ちを切り替えて宅建の勉強をスタートさせたのは、なんと本試験の10日前だった。

書店に足を運び、そこで宅建の教材を物色して手にしたのは、15年分の本試験問題が、見開き2ページに問題と解答という配置で掲載されている過去問集だった。

テキスト類には目もくれず、彼が購入したのはその15年分の過去問集一冊のみ。

その日から司法試験の勉強は一旦中断し、宅建の勉強に集中することになる。

宅建試験が四肢択一であることを初めて知った彼は、戦略を練った。当時の宅建試験は、50点満点で35点あれば合格できる試験だった(分野ごとの配点は今と若干異なっていた)。

司法試験の択一に毎年受かっていた彼は、権利関係(15点)の学習に時間を割く必要がなく、法令上の制限と宅建業法の2分野(26点)に絞って勉強し、あとは捨てる戦略に出たのだ。

わずか10日間で、それも過去問のみで業法と法令の2分野をマスターした彼は、41点で見事合格を勝ち取ったのである。

過去問を掘り起こす
https://paparing-takkenshi.com/entry/2020/08/12/191510

上記「過去問を掘り起こす」 は、以前にそのことについて触れたブログ記事である。

──テキストの使い方

実際、20年以上前の宅建試験ならば、過去問だけで合格をつかみとることは可能だった。

ただ前提条件として、もともと地頭がよく、勉強慣れしている必要はあったと思う。

宅建試験は、年によって多少難易度にバラつきはあるものの、難化傾向にあることは間違いない。今の宅建試験は一昔前とは違って、とても一筋縄ではいかないのだ。

過去問だけでは、どうしても知識の抜けが発生し、穴あきチーズのような隙間だらけの知識が形成されてしまう。

この穴をふさぐ意味でも、最低限のテキストの読み込みは必要となる。うってつけのテキストがあるので紹介しておきたい。

宅建士 出るとこ集中プログラム(2022年版/中央経済社)

学習の初期の段階では、テキストをさらっと読んで一問一答を解く。私の経験上、この学習方法が一番効率的だ。できれば2往復する。

その後は、一問一答のみに専念し、どうしても分からないときに限ってテキストに戻る。

一問一答は最低でも5周し、95%以上の正答率を目指す。これが達成できたら、次は『ウォーク問』に代表される分野別過去問に移る。

すでにテキストは2往復しているので、分野別過去問では、テキストは調べるために用い、過去問学習に時間を割く。

とはいえ、一問一答が完璧ならば、分野別はそんなに時間はかからない。一問一答に費やした時間の4分の1程度の時間で済むはずだ。

──テキストと過去問の時間比率

私は過去のブログで、テキストと過去問の時間比率を2対8ないし3対7と主張してきた。

その考えは今でも変わっていない。だが分野ごとにみた場合、多少それとは異なる。

宅建業法と法令上の制限については、その比率で問題ない。この2分野に関しては、今でも私は2対8で過去問が8だと思っている。

税や免除科目もほぼ同じくらい。

違うのは権利関係だ。民法が大改正されたこともあるが、そもそも権利関係は、理解が伴わないと問題自体が解けない。

その理解は、過去問から得られる断片的なものだけでは足りず、テキストを読み込んで体系的に把握しモノにしなければならない。

他の分野と異なり、権利関係では、知識よりも理解が優先されるからだ。もちろん他の分野も理解は必要だが、権利関係のように思考力を伴った理解が必要とまではいえない。

テキストを読むときも、他の分野はさらっと読めば良かったが、権利関係はじっくりと読み込まなければならない。

だから必然的に時間がかかる。権利関係のテキストと過去問の時間比率は、5対5くらいだと思ってほしい。

過去問を解くときも他の分野より時間がかかるし、その比率が丁度いい。

またそれくらいの時間をテキストに割かないと理解が追いついていかないと思う。

特に法改正部分は、過去問のストックがまだまだ不足しているため、テキストの読み込みは避けられない。

異論はあるだろうが、それでも全体としては、過去問に時間の大部分を費やすべきだと私は思っている。

各肢に内包された論点を頭に叩き込めば、模試や本試験が瞬殺できるからだ。

宅建試験は、時間との闘いでもある。業法や法令の問題を瞬殺できれば、最後に権利の問題を解くときに、時間に余裕ができる。

じっくりと考えながら解く時間が捻出できるのだ。私の場合、本試験の直前期に、いかに業法の問題を早く解くことができるかが課題だった。

直前期は再び一問一答に戻って解いていたのだが、一問あたり2秒を目標に、5秒を超えたら正解していても✕とカウントしていた。

その甲斐あってか、本試験では業法で19点とることができた。

業法と法令、特に業法では、直前期にこの訓練は絶対にした方がよい。

最後にもう一度だけ、目安となるテキストと過去問の時間比率を掲げておく。言うまでもないが、左がテキスト、右が過去問である。

権利関係→5対5
権利関係以外→2対8ないし3対7


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配偶者が居住する権利【権利】

──はじめに

被相続人が死亡した後、残された配偶者が住居を取り上げられたら路頭に迷ってしまう。そこで平成30年の民法改正に伴い、被相続人の配偶者の居住権を保護する制度が創設された。

それが「配偶者居住権」及び「配偶者短期居住権」である。長期的に保護するのが配偶者居住権で、短期的に保護するのが配偶者短期居住権だ。令和2年4月1日から施行されている。

その名のとおり、建物の居住に関するもので、今後の宅建試験でも狙われやすいテーマといえるだろう。

──配偶者居住権

相続開始時に、配偶者が、被相続人が使用する居住建物に住んでいた場合、遺産分割遺贈によってその建物全部を無償で使用・収益することができる(譲渡は、登記は)。

この権利が「配偶者居住権」である。

配偶者居住権の期間は、終身の間(または一定期間)で、配偶者がその建物に居住しながら預貯金を相続することが可能となり、老後の生活費などを確保できるようになった。

また配偶者が、居住建物の共有持分を有する場合でも、遺産分割や遺贈で権利を取得できれば配偶者居住権は成立する。

ただし被相続人が、相続開始時にその居住建物を配偶者以外の者(被相続人の親族など)と共有していたときは例外的な扱いとなり、配偶者居住権は成立しない。

──配偶者短期居住権

相続開始時に、配偶者が、被相続人が使用する居住建物に住んでいた場合、6ヵ月間はその建物の居住していた部分を無償で使用することができる(収益や譲渡、登記は)。

例えば遺産分割協議がまとまり、配偶者以外の者が居住建物を相続した場合でも、配偶者は最低6ヵ月間はその居住建物に無償で住み続けることができるようなった。

これが「配偶者短期居住権」である。

その間に、他の居住建物(アパートなど)をゆっくり探すことができるわけだ。

この配偶者短期居住権で認められているのは、居住建物の一部(居住スペースのみ)であって全部ではない。また被相続人が死亡する前に反対の意思を表示していたとしても、この権利の妨げにはならない。

──まとめ&一問一答

両者とも、権利を取得したあとに善管注意義務が課せられ、通常の必要費は配偶者が負担しなければならない。この権利は相続されず、配偶者の死亡によって終了する。

異なる部分のみを列挙してみた。

【配偶者居住権】

・遺産分割や遺贈によって取得する。
・収益もできる。
・期間は終身の間(注:別段の定めがあれば短縮も可能)。
・居住建物の全部を使用できる。
・登記ができる。

【配偶者短期居住権】

・相続開始時に当然に取得する。
・収益はできない。
・期間は6ヵ月間(注:遺産分割により居住建物の帰属が確定した日または相続開始の時から6ヵ月を経過する日のいずれか遅い方)。
・居住建物の一部を使用できる。
・登記はできない。

      ⇩    ⇩

⑴ 被相続人の配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたときは、被相続人が相続開始時に当該建物を配偶者以外の者と共有していた場合であっても、当該建物の全部について無償で使用及び収益をする権利を取得する。◯か✕か?

⑵ 配偶者短期居住権は、被相続人の配偶者が、遺産分割または遺贈によって取得する。◯か✕か?

⑶ 配偶者短期居住権は、登記することも、譲渡することもできない。◯か✕か?

⑷ 配偶者短期居住権における配偶者は、遺産分割により居住建物の帰属が確定した日または相続開始の時から6ヵ月を経過する日のいずれか遅い日までの間、その居住建物を無償で使用および収益することができる。◯か✕か?

【答】⑴ ✕(被相続人が相続開始時に配偶者以外の者と居住建物を共有していた場合、配偶者居住権は成立しない)、⑵ ✕(当然に取得する)、⑶ ◯、⑷ ✕(収益はできない)


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配偶者が居住する権利【権利】|パパリン宅建士
#note 「穴埋め問題」あります↓
https://note.com/paparingtakken/n/n7489010a6d26

民法総則のマイナー論点

──はじめに

最近、また民法の学習を少しずつ始めるようになったのだが、総則部分にあまり馴染みのないテーマがあることに気付いた。

宅建試験にはややオーバーワークかも知れないが、権利関係で満点を狙いにいっている方々は抑えておいた方がいいと思う。

ご存知のように、宅建の権利関係の難易度は、他の法律系の資格試験(行政書士試験など)と比べても遜色がないほどレベルが高い。

合格するのに必要な得点率の差こそあれ、問題の難易度そのものに大差はないのだ。

加えて近年の宅建試験は、これまで出題されなかったテーマが突然出題されたりすることがある。例えば昨年の12月試験、、

民法の“家族法”の中から、それまでは相続からしか出題されてなかったのに、突如「親族」から出題されたのだ。

他にも、宅建試験には珍しく、債権者代位権や詐害行為取消権が出題された年もある。

これらのテーマは通常の宅建テキストには掲載されていないか、ほんのおまけ程度に載っている場合がほとんどなので、未学習のまま本試験を受けると撃沈する可能性が高い。

権利関係で満点(14点)はいらない、10点あれば十分だという方は下記のテーマは必要ないと思うが、満点ないし12点以上がノルマだと考えている方には十分に意味があるものと信じる。

こういったマイナー論点に枝葉の知識は必要なく、条文知識で得点できる場合がほとんどである。よって条文中のワードを「穴埋め問題」にして、短時間で覚えられる工夫をした。

恐らくこのあたりが、宅建試験における民法のテッペン、限界点だろう。

権利関係を得点源にしたい方、あるいは宅建合格後に、さらに上位資格を目指している方々に活用してもらえたら幸いである。

──条文穴埋め問題で攻略

第125条〔法定追認〕

 追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。
 ① 全部又は一部の( a )
 ② 履行の( b )
 ③ ( c )
 ④ ( d )の供与
 ⑤ 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の( e )
 ⑥ ( f )

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【答】a 履行、b 請求、c 更改、d 担保、e 譲渡、f 強制執行 *取消権者が債務者の場合、②と⑥は法定追認に当たらない。

第131条〔既成条件〕

1 条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は( a )とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は( b )とする。
2 条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は( c )とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は( d )とする。

第132条〔不法条件〕

 不法な条件を付した法律行為は、( e )とする。不法な行為をしないことを条件とするものも、同様とする。

第133条〔不能条件〕

1 不能の停止条件を付した法律行為は、( f )とする。
2 不能の解除条件を付した法律行為は、( g )とする。

第134条〔随意条件〕

停止条件付法律行為は、その条件が単に債務者の意思のみに係るときは、( h )とする。

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【答】a 無条件、b 無効、c 無効、d 無条件、e 無効、f 無効、g 無条件、h 無効(債権者の意思のみに係るときは有効。解除条件付法律行為の場合は、債務者でも債権者でも有効)

第137条〔期限の利益の喪失〕

 次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。
 ① 債務者が( a )を受けたとき。
 ② 債務者が担保を( b )させ、( c )させ、又は( d )させたとき。
 ③ 債務者が( e )を負う場合において、これを供しないとき。

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【答】a 破産手続開始の決定、b 滅失、c 損傷、d 減少、e 担保を供する義務

第151条〔協議を行う旨の合意による時効の完成猶予〕

1 権利についての協議を行う旨の合意が( a )でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。
 ① その合意があった時から( b )を経過した時
 ② その合意において( c )が協議を行う期間(1年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時
 ③ 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を( d )する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から( e )を経過した時
2 前項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた( f )は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有する。ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効の完成すべき時から通じて( g )を超えることができない。

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【答】a 書面(又は電磁的記録)、b 1年、c 当事者、d 拒絶、e 6箇月、f 再度の合意(再度の催告では、時効の完成猶予の効力は有しない)、g 5年